(立体イラスト:kucci、撮影:写真映像部・東川哲也)
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「ここ数年、管理組合の役員をしております。なりたかったわけではなく、仕方なくですが……」

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 東京都内の分譲マンションに住む女性(58)は、苦笑交じりに語る。

 住んでいるのは、築40年ほどの総戸数約80戸の中規模マンション。管理組合の役員は、住民同士の互選で選ばれ、任期は1年だ。

 女性がこのマンションに引っ越してきたのは10年ほど前。当初役員を引き受けるつもりはなかったが、6年ほど前に「子育て世代にも役員になってほしい」との打診を受け、当時、子どもが中学生だったこともあって引き受けることにした。それ以来、毎年再任され、今年で6年目を迎えている。

 マンションの資産価値が下がるのが不安だから役員を続けているという。だが、本音は「辞めたい」と話す。理由は、理事会で痛感する世代間ギャップだ。

「役員にご高齢の方が何人もいらして、お考えもずいぶん古くて」(女性)

 理事会のメンバー6人のうち4人が70代。理事長は70代後半で、役員の構成は高齢層が中心を占めている。

「電子なんか信用できない」

 まず困るのが、理事会の運営の進め方だ。理事会は基本的に月1度のペースで開かれるが、忙しい時はZoomなどオンラインで参加したい時もある。そこで、女性が理事長にオンラインでの開催を提案すると「そんなのは信用ならない」と即却下。

 管理費の扱いもネットバンキングを使えば便利なのに、「ネットは危ない」「電子なんか信用できない」と反対され、いまだに通帳管理のまま。

 議事録もオンラインで共有すればいいと思うが、「紙じゃないとわからない」との理由で拒まれる。管理会社の担当者も「そうですよね、紙ですよね」と賛同する始末だ。

 女性は嘆息する。

「まるで罰ゲームに付き合わされている気分です」

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