
「塾でめっちゃ難しい算数のテストがあるんです。悲しいことに、いつも計算ミスをしまくって150点中100点くらいしか取れなかったけど、昼寝をしたら夜まで集中できて145点くらい取れました」
石井さんの報告には、「私もテストの点が10点上がった!」などと、ほかの子どもたちからも同様の声が次々とあがった。
昼寝はあくまで“応急処置”
児童9人のうち、プロジェクト前に睡眠の悩みを抱えていたと話す子は、実に7人もいた。スマホやタブレット画面を見つめて目を酷使したり、夜遅くまで塾で勉強したりと、お疲れモードの小学生も少なくない昨今。日中の眠気やパフォーマンス低下を緩和する昼寝の効果は、大人だけでなく子どもも実感するようだ。
だが注意が必要なのは、昼寝はあくまで“応急処置”であるということ。東京医科大学睡眠学講座の客員教授で医師の志村哲祥さんは、「昼寝は夜の睡眠の代わりにはならない」と釘をさす。
「そもそも人間は、3、4歳以降は昼寝の必要がありません。昼寝ができるという時点で、睡眠が足りていない証拠。夜の寝不足によって心身に不調をきたしている場合、昼寝では根本的解決にはならないのです」
志村さんによると、睡眠不足の子どもは脳神経の成長が阻害され、社交性や協調性が下がり、粗暴な問題行動も起こしやすくなるという。また13~18歳を対象にした研究では、睡眠時間が短くなるほど自殺リスクが高くなるというデータもある。
「日本の子どもは世界的に睡眠時間が最短の域にあり、G7加盟国で10代の自殺率は日本がトップとなっている。この二つの事象は、無関係とは言い切れないでしょう」