二つ目は、学校や社会的な接触機会の増加が挙げられます。10〜19歳の若年層は学校やクラブ活動、部活動などで多くの人と接触する機会が増えます。このため、集団内での感染が広がりやすく、百日咳のように非常に感染力が強い病気にかかるリスクが高くなると考えられます。
三つ目は、百日咳ワクチンの追加接種が不十分であることです。百日咳の場合、追加接種は成人を対象としており、さらに任意接種のため接種費用は自己負担です。日本では、任意接種となっている百日咳ワクチンの成人における接種状況を把握するための全国的な統計は公開されていませんが、一般的に費用負担のある義務ではない任意接種は接種率の低下につながることが知られています。また、百日咳ワクチンの免疫効果は、接種から4~12年で低下するといわれています。成人や高齢者はもちろん、学童期の児童においても、初回接種からの時間の経過と共に免疫が低下しまい、百日咳に感染するリスクが高まってしまっている可能性があるというわけです。
6歳時点から免疫が低下している可能性
01年から、四種混合ワクチン(DTP-IPV)が導入され、接種スケジュールが変更され、6歳時点での追加接種(4回目)が義務づけとなりました。そのため、6歳時点で4回目の追加接種を受けるようにはなっているものの、数年が経過すると百日咳に対する免疫が減衰し、再度感染リスクが高まります。特に小学校高学年や中学生は、6歳時点の接種から数年経過しており、免疫が低下している可能性があるといえるのです。
その上、2001年以前に接種を受けた子どもたちは、6歳時点での4回目の追加接種を受けていないことが多く、そのため免疫が不完全な場合があります。この年齢層の追加接種を行うことで、免疫のギャップを埋めることも可能になります。
実際に、私の接種歴を例に挙げてみます。母子手帳の記録によると、1989年生まれの私は92年に計3回のDTPワクチンの初回接種、93年に計1回の追加接種で百日咳に対する免疫を獲得しています。それ以降、学童期における追加接種の記録はなく、医療従事者として勤務し始めために追加接種を行なった記録があります。6歳時点での追加接種が義務づけられてはいなかったため、学童期の追加接種を受けていなかったと考えられますが、そのような免疫が不完全なままになっている世代の人は多くいると考えられます。
成人が百日咳に感染した場合、症状が軽度であることも多いのが現状です。そのため、気づかずに免疫の低い人に感染を広げてしまう可能性があります。成人期における接種は、任意で推奨はされているものの、接種費用が自己負担となると、接種から足が遠のいてしまうのも無理はありません。