コロンビア大学が屈した“無茶ぶり”
コロンビア大学に対する要求のひとつは、ガザ紛争をめぐるキャンパス内での抗議行動の取り締まり強化。キャンパスが昨年、親パレスチナ運動の最大の拠点となったことで、政権は「反ユダヤの動きを許している」と大学を強く非難した。
加えて、政権の多様性政策の廃止に伴い、入試や職員の採用方法の見直しを求めた。さらに中東・南アジア・アフリカに関する研究内容には外部の監査を受けるよう、政府によるコントロールを要求した。この無茶ぶりとも言える条件は、明らかに教育の自由の侵害、憲法違反である。
ところが、コロンビアは学生や教職員の安全を守るためとして、この要求に応じてしまった。これに気を良くしたのか、政権は全米の60以上の大学に対しても、同じような攻撃を仕掛けた。
ハーバード大はトランプ政権を提訴
ハーバード大学にも似たような条件が提示されている。親パレスチナ運動の取り締まり、入試や採用における人種、国籍に基づく優遇措置の中止や、多様性プログラムの閉鎖を求めた。また「反ユダヤ主義を含め、アメリカの価値観や制度の敵と見なされる」留学生を入学させないようにする。まさに教育内容から校風・文化まで、あらゆる面で政府方針に従うよう求めた。
しかし、アラン・ガーバー学長が「私立大学が何を教え、誰を入学させ、雇用し、どのような研究をすべきかを、政府が指図すべきではない」と要求を突っぱねると、政権は前代未聞の総攻撃に出る。助成金打ち切りに加え、非営利団体としての税控除を大学から剥奪、そして、海外からの留学生の受け入れを止めるという脅しに出たのだ。
ハーバードは「大学はその独立性を放棄することも、憲法上の権利を放棄することもない」と徹底的に戦う構えを見せ、政権を提訴している。
ハーバードの強い態度は、他の大学にも勇気を与えた。主要私立大を含む約10校が結束し、連邦政府に反対するグループも組織された。しかし、大学側の立場は決して強くない。突出した莫大な自己基金を持つハーバードは例外で、他の大学にとって助成金を失うのは大きなダメージになる。
ただし少し考えれば、これが国家にとっても大きな損害だということもわかる。助成金が減れば、あらゆる産業の基礎となる研究は間違いなく弱体化する。こうした大学ではすでに研究費が削られ、がんや感染症などの研究に支障をきたしている。このままでは近い将来、国としての競争力低下は避けられない。
そんなリスクを負ってまで、トランプ大統領はなぜこのような総攻撃を仕掛けているのか? それは、「文化戦争に勝つこと」が政権にとって何よりも重要だからだ。