
今の効率重視の社会では、「非効率」なやり方なのかもしれない。でもそのひと手間が大事なのだ。
「非効率なことをしようとは思ってないんです。この方法でしか、僕は結果が出せないだけ。本をベストセラーにすることや、テレビでのPRを決めることも大事なんですが、僕のゴールは、著者や編集者に喜んでもらうこと。相手が嬉しいと思うことをやりましょう、ということなんです」
黒田さんが心がけているのは、本のPRをするときには、相手が何に困っているかを聞き取ること。そのうえで相手の困りごとが解決でき、なおかつ本を紹介してもらえるような提案をする。誰かに会うときも、メールを送るときも、「黒田さんだ、嬉しい!」と思われるにはどうしたらいいかを考える。いかに誰かの心を「クンッ」と動かせるかが鍵になる。
では、自身初の著書はどうPRしているのか。まず、発売前に出版社にプルーフ(見本)を400冊作ってもらったという。
「それをテレビの人でもメディアの人でも、全部会って手渡ししました。そうすると、どこが印象に残ったのかなど、反応がわかりますよね。次に会う人に、そこをアピールしていくんです」
また、書店回りでは、本を売りこむだけでなく、Tシャツにそれぞれの書店名を書いてもらうようにした。そのTシャツが、話の潤滑油になるし、「また来た」と思われずに再度書店を訪れるきっかけにもなる。目指すは10万部。
「楽しいことを考えるのが好きだし、それをみんなでやって結果に結び付けたい。コスパ、タイパより僕は“タノパ”重視です」
(編集部・大川恵実)

※AERA 2025年6月2日号
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