スーパーのコメ売り場(撮影 加藤裕則)
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 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年5月17日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

【図表】高止まりしているコメの価格

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 1年前に比べて2倍近くに価格が跳ね上がったコメ。実は高止まりの一因は消費者の旺盛な購入意欲にもあるようだ。政府の備蓄米の放出効果もなお限定的だが、気づかぬところで効果も出始めている。

 総じて物価の上昇傾向が続くが、その中で突出した値上がりを記録してきたのが米価だった。だが、農林水産省によれば全国のスーパーで4月28日〜5月4日に販売されたコメの5キログラム当たりの平均価格はその前の週を下回り、18週間ぶりの値下がりを記録したという。

 もっとも、値下がり幅はわずか19円にすぎなかったのも確かだ。ようやく頭打ちの兆しがうかがえるようになったとはいえ、依然として高止まりしているというのが私たち消費者の実感だろう。

「令和の米騒動」とも呼ばれる今回のコメ高騰は、昨夏の南海トラフ巨大地震に関する臨時情報がその発端だった。地震発生に備える買いだめが勃発し、スーパーをはじめとする小売店の店頭からコメが消失。秋から2024年産米が出回るようになれば供給も安定化して価格も下がると言われたが、実際にはその後も高値が続き、今年3月半ばから国が備蓄米の放出を開始してもその効果はなかなか顕在化しなかった。

 こうした状況に多くの消費者がヤキモキしていたわけだが、『日本のコメ問題』の著者で国内の農業問題に詳しい宇都宮大学農学部助教の小川真如さんは、備蓄米を放出しても高止まりしている要因についてこう指摘する。

政府が備蓄米を放出し続けても高止まりする理由

「まず、放出前の時点から2024年産米がすでに高値で取引されていたことが挙げられます。加えて、もともと備蓄米の放出は流通対策として決まったことでしたが、次第に物価高騰対策として位置づけられるようになりました。こうして政策の目的が変更されているのに対し、手段の変更がされなかったため、効果が限定的になったのです」

 当初における農水省のスタンスは、コメの円滑な流通に支障があると判断した場合に放出するというものだった。いつの間にか石破政権は高騰を抑えるための施策と捉えるようになったが、放出の具体策が流通対策として打ち出された当初案からすぐには見直されなかった。

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