「今回の放出自体は、法改正なしで行えるということで内閣法制局からお墨付きをもらって実施したものです。しかし、法律の拡大解釈と言える内容であり、本来の備蓄米制度が想定していない供給となっているため、流通に時間を要していることも高止まりに結びついています」(小川さん)

 そもそも備蓄米とは、主に政府が凶作時の供給不足に対応することを目的に確保されているものだ。1993年に発生した「平成の米騒動」(冷夏がもたらした大凶作)を教訓に定められた食糧法に基づき、10年に1度のレベルの不作に陥っても供給を安定させるため、100万トン程度を目安に備蓄している。

先高感でせっせと買いだめすると高止まりを助長?

 一方で、私たち消費者もきちんと現実を直視できていない側面があるようだ。国の備蓄米放出がほとんど成果を上げていないと決めつけるのは、狭い視野による乱暴な判断であるとも言える。

「スーパーなどの小売店で販売されているコメの値段ばかりに目を向ける風潮が強まっているため、どうしても高止まりしているように見えてしまいがちです。けれども、全体を見渡せば、米価は下がっていると私は考えています。備蓄米の放出先は小売店だけに限定されているわけではなく、中食・外食や学校給食向け、病院食向けなども対象になっているのです。備蓄米の流通によって中食・外食の価格が据え置かれていたとしても、消費者の多くはその効果を実感できていないでしょう」(同)

 実は農水省が21万トンの備蓄米を放出すると発表した2月14日の時点で、小川さんはムラ(不公平感)のある値下がりを予想していたという。つまり、中食・外食向けのような業務用が値下がりする一方で、小売店の店頭価格にはさほど変化が見られないという構図だ。消費者にとっては、「備蓄米放出=小売価格が値下がりする」との期待が裏切られた格好になる。

 小売価格がなかなか下がらないことは、むしろ消費者の購買意欲を高める方向に作用している側面もあるという。これから先も値上がりする恐れがあるなら、今のうちに買っておこうと考える消費者が多いのだ。

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