
「編み物が、私の脳と心と指先を元気にしてくれるんです」──ギネス認定・102歳の現役美容部員、堀野智子さんの“手仕事ライフ”に密着! 日々の空き時間に、するすると編み棒が動く。細かい透かし模様を自由自在に生み出し、完成すれば惜しげもなく誰かに譲る。「何を作るか考えて、編んで、仕上げる」そのプロセスが、堀野さんにとって最高の脳トレであり、幸せな時間です。
ストッキングで編んだペンケースや、レースのようなニットの数々。 “編むことそのもの”に喜びを見出す堀野さんの言葉には、歳を重ねても夢中になれることの大切さが詰まっています。堀野さんの最新刊『102歳、今より元気に美しく』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・加筆再編集して公開します。
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――堀野さんと話していると、「102歳の方」だとついつい忘れてしまいます。耳もものすごく良いですし、すごくハキハキおしゃべりされますし、お料理の腕もピカイチです。こんなに元気な理由を、堀野さんの得意な「手仕事」と結びつけたくなります。まずは「編み物」について教えていただけますか。
手仕事全般が好きなので、この歳まで自分の着るものをたくさん作ってきました。
高齢になって手仕事をしなくなる人が多いようですが、昔の人は私のように一通り自分の着るものを作れるという人が少なくありません。
というのも、私が若かったころは、まだ既製服もあまり売っていなかったので、自分で作るしかなかったんです。
男性の背広やスーツこそ洋裁店で注文して作ってもらっていましたが、女性や子どもが日常的に着るものは手作りが当たり前でした。
将来の主婦予備軍が通う女学校では、お裁縫の時間が重要視されていました。特に私が通っていたのは実用的なことをたくさん教えてくれる学校だったので、和裁や洋裁、編み物、刺繡など、手仕事全般をみっちり仕込んでもらったのは、すでにお話ししたとおりです。
今でも捨てられずに取ってあるのが、女学校で習った日本刺繡を施した生地です。絹糸を使った美しいもので、シミ一つありません。とても80年以上経ったものとは思えないほどです。
手仕事は全部好きですが、中でも毎日欠かさず続けているのが編み物です。
好きになった理由は「どこでもできるから」。和裁や洋裁の難点は場所を取ることです。やるとなるとまずは布や道具を広げる空間を確保しなくてはなりません。
そうなるとある程度まとまった時間も必要になってきます。せっかく広げたのにほんの少しの時間しか縫えないのでは、張り合いがありませんよね。
その点、編み物は本当に手軽なんです。どこにでも持ち運びができるし、どこででもできちゃう。
ほんの少しの隙間時間を利用して編むことも可能です。途中で編むのをやめればいいだけですから。