アグネス・チャン/1955年、香港生まれ。72年に日本で歌手デビュー。上智大学を経て、トロント大学卒業。スタンフォード大学に留学し、教育学博士(Ph.D)を取得(photo 写真映像部・東川哲也)

「世界を変えるかもしれない人材」が求められている

アグネス そうなんです。それも入試の前年1年間だけじゃなく、3年間の活動が評価されますから、ずっと「いい子」でいないといけないんです。そうすると、もう中学生ぐらいからずっとこの子はどうしたら強くて優しく、魅力的で、社会的に有利な人間になるのか考えながら子育てしていかないといけない感じです。

佐藤 なるほど。そういう意味では、灘をはじめ、日本の高校の多くは当日の試験の結果一発で決まりますから、わかりやすいと言えばわかりやすいです。

アグネス スタンフォードの入学試験も、エッセイ、推薦状、課外活動、学力テスト(SATやACT)などが必要です。特に、全米のアイビーリーグと言われる有名大学では、学校ごとに明確なビジョンがあります。スタンフォードの場合は、「世界を変えるかもしれない人材」を求めています。簡単に言うと次のGoogleやアップル創業者になれそうな人ですね。ですから頭が良くて真面目一辺倒でもダメなんです。

日本の入試は努力が報われる仕組み

佐藤 日本も最近は総合型選抜が増えてきましたが、学力試験のみで決まる試験はまだ多いですね。だからこそ、日本の入試は努力が報われる仕組みではあると思います。明確な基準があり、対策を重ねることで突破できる。

アグネス 米国の入試の場合、人によって性格や強みが違うから、それぞれの分野で光るものを持っていなきゃいけないんです。うちの長男は成績が良かったけれど、それだけでは単なる“ガリ勉”に見えてしまう。だから、課外活動や学校内のミュージカルのオーディションに挑戦しようかな、と言ってきた時は全力で応援しました。夏休みにタイやカンボジアにボランティアに行ったりもしました。

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