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 4月13日に大阪・関西万博が開幕した。万博協会は半年間の会期で2820万人の来場を見込むが、設備状況はどうなっているのか。東京科学大学医学部臨床教授の木村知医師は「私がいちばん憂慮するのは、会場のトイレ事情だ。このままでは夏に向けて、多くの人が熱中症に見舞われる恐れがある」という――。

「並ばない万博」で大行列とは…

 大阪・関西万博が開幕した。会場建設費の高騰、パビリオンの工期遅れや出展辞退、メタンガスの噴き出しや避難経路の問題など、さまざまな課題をかかえながらの開催となったが、4月13日の開幕初日には、「並ばないはずの万博で大行列」「スマホの通信障害」など、さらに具体的な問題がつぎつぎと噴出してきた。

 今年は桜の開花後も冷え込む日々があり、つい先日まで気温が乱高下していたが、ここにきてようやく暖かい日が増えてきた。いや、温暖ですごしやすいというより早くも初夏、ここからは30度に届かんばかりの日さえありそうだ。

 気温の乱高下だけでも体調を崩しやすいのに、まだ暑さに慣れきらない状態のまま猛暑が突然やってくると熱中症のリスクは格段に高まる。そんなただでさえ危険な季節を目の前にして万博は開催されたのである。

 そして真夏に向けて気温はさらにぐんぐん上がる。来場者に熱中症患者が発生しないことのほうがあり得ない。猛暑日には同時多発的に急患が発生する事態が頻発すると考えるほうが自然だろう。

大屋根リングの「日よけ」は本当に足りるのか

 今から10カ月ほど前、2024年6月26日の東京新聞「こちら特報部」は、〈毎年「記録的な暑さ」が続く? 地球沸騰化の時代に開かれる大阪・関西万博の「熱中症対策」を案じる〉との記事を掲載、私も医師の視点から、コメントを提供した。

 自見英子万博相は2023年11月の国会で、大屋根リングについて「日よけとして大きな役割を果たす」と胸を張ったが、来場者数を考えればとても足りない。多くの人がリングの下に逃げ込むことを想像してみれば気づくことだが、そこでは人々が密集し、風も通らず、むせかえるような温度と湿度となることだろう。私は「広大な屋根のあるスペースを至るところに準備する必要性は自明」とコメントした。

 移動式のスポットクーラーやウォーターサーバーも設置されるとのことだが、文字どおり“焼け石に水”だろう。これらにも行列や新たな人々の密集が形成されることは想像にかたくない。

 そして、さらに熱中症のリスクを高めかねない、ある重大な万博会場の「欠陥」を、私は開幕初日の報道で知ったのである。

 それは万博会場のトイレ事情だ。

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