未来を語る万博は酷暑を乗り越えられるのか
このような人に話を聞くと、「飲んでも飲んでものどが渇くし、尿もたくさん出てしまうから、脱水になっちゃいかんとまた飲んで……ということを繰り返していました」とおっしゃることが多い。これは急性の糖尿病の一種、ペットボトル症候群という非常に危険な悪循環に陥っている可能性があるので、早急に医療機関を受診する必要がある。
このように、熱中症、脱水におちいりやすい環境では、日よけやクーリング、水分摂取はもちろん重要だが、それのみならず、電解質バランス、血糖コントロールについても十分に留意しなければならないし、個人個人の基礎疾患や、その日の体調によってもリスクは大きく変動しうる。
酷暑の真夏を目前に、このような準備態勢で万博を成功できると推進してきた人たちに、こうしたリスクははたして見えていたのだろうか。見えていたのに、気づかぬふりを決め込んでいたのだろうか。
「リスクがあるのは当然。それを自分で調べて、自分で準備して、すべては自己責任で」というのが「いのち輝く未来社会のデザイン」の基本的なコンセプト、具体的なメッセージだというのであれば、推進の旗を振ってきた人たちの顔を思い浮かべて、妙に納得してしまう自分もいるのだけれども。
(医師/東京科学大学医学部臨床教授:木村 知)
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