CPGの看板の前に、ロックされて警告フダが巻かれた自転車が並ぶ。神奈川県川崎市の「みんちゅう」駐輪場で(撮影/AERA編集部・川口穣)
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 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年5月15日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

【写真】警告フダが巻かれたまま、長期間放置されているとみられる自転車

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 自転車に勝手にカギをかけられ、高額な「罰金」を請求された――。いま、東京や大阪などでそんな被害が相次いでいる。

 東京都の女性は4月のある朝、ロック式の有料駐輪場に自転車を停めて子どもを保育園に送り、そのまま出勤した。夕方18時ごろに戻ってくると、もともと停めた場所に自転車がなく、驚いたという。自転車はすぐ近くのスペースに移動され、カギがかけられていた。そして、「不正車両ロック中」という見慣れぬタグが1枚。慌ててタグに印刷されたQRコードを読み込むと個人情報の入力を求められ、最後に6000円近い損害賠償金が請求された。

「朝、しっかりゲートにロックしたつもりで『ガチャン』という音も聞いていましたが、急いでいたので100%の自信はありません。もしかしたらちゃんとロックされていなかったのかもしれず、それならば私の落ち度です。でも、表示された金額があまりにも高額だったし、よくよく見ると管理会社の公式なものなのかもわからない。本当に驚きました」(女性)

最終的に1万円近くの請求

 カギをかけたのは、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社サイバーGが運営する「CYBER PATROL GOVERNMENT(以下CPG)」なる「不正駐輪取り締まりサービス」だ。同社の業務委託とみられるスタッフが契約先の駐輪場を回り、予約や登録なしに駐輪していたり、ロック式なのにロックがかかっていなかったりする自転車、バイク、キックボードなどに施錠し、反則金を請求している。アイキューソフィア株式会社が運営する駐輪場シェアリングサービス「みんちゅうSHARE-LIN」に多数導入されているほか、東京・大阪・名古屋などの駐輪場・駐車場で取り締まりを行っている。

 金額の高さに驚いた冒頭の女性が駐輪場の掲示板にあった管理会社の緊急連絡先に電話すると、「当社は関係ない。カギを壊していい」という返答で、女性は保育園で工具を借りてカギを壊し、そのまま自転車に乗って帰った。だが、話はそれで終わらなかった。女性が1度個人情報を入力していたことから、CPGから再び請求の連絡が来た。それも、当初の金額から「日別管理料」が上乗せされ、請求は最終的に1万円近くになった。女性はこれ以上のやり取りを避ける意味で、泣く泣く支払ったという。

 女性の問い合わせに「関係ない」と返答した管理会社だが、実際にはこの会社はサイバーG社に取り締まりを委託している。管理会社は「『無関係、カギを壊していい』と返答したとすれば、委託先のコールセンター担当者との伝達ミス」だと説明するが、このコールセンター業務を担当したことがある人物によると、「同様の問合せはちょくちょくあるが、管理会社に確認しても『(取り締まりを)委託していない』と説明がある」という。

CPGによって自転車に巻かれた警告フダ。QRコードを読み込むと個人情報の入力が求められ、その後反則金が請求される。支払うとナンバー錠を解除する番号が通知されるという(撮影/AERA編集部・川口穣)

「ひとつのやり方としてあり」

 管理会社の担当者はサイバーG社に取り締まり業務を委託している理由をこう説明する。

「以前は自社で巡回して、正常にロックしていない自転車をゲートに押し込んだり、警告フダを巻いたりしていました。でも、その人件費だけでかなりのコストになるし、不正をした人も結局正規の駐輪場代を払うだけなので『あわよくば』という人が減らず、頭を悩ませていました。(CPGのやり方は)金額も含めて賛否あるのは理解していて、自社でできるかというと難しいですが、正しく利用するユーザーさんのためにも、ひとつのやり方としてありなのかなと思っています」

 サイバーG社はこの管理会社との関係について、「別会社である」と回答している。ただし、管理会社の代表取締役は2人いるサイバーG社の代表取締役を兼ねていて、グループ企業を紹介するホームページなどでは両社の社名が確認できる。また、「みんちゅうSHARE-LIN」のアイキューソフィアもこのグループに名を連ねている。

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