
サイバーG社は取り締まりについて、「不正駐車・駐輪は長年土地所有者や正規の利用者、住民を悩ませてきた社会問題」であり、「土地所有者ならびに管理会社より正式に委託を受けた敷地において、事前に設置された案内看板に基づき取締を行っている」と主張する。
だが、横浜合同法律事務所の清水俊弁護士によると、この取り締まりは民事・刑事両面から違法の疑いが強いという。
「民法では『自力救済』、つまり法的な手続きを経ずに自らの力で権利を回復しようとすることを禁じています。不正駐輪の例で言うと、一部例外はありますが、そもそも勝手にどかしてはいけないのが大原則。金銭的な損害についても、請求できるのは賃料相当分です。1日停めて100円から数百円という駐輪場で6000円近い金額を請求するのは明らかにやりすぎでしょう。また、勝手に施錠する行為は事実上自転車を使えなくしていますので、刑法の器物損壊にあたる可能性がありますし、カギをかけて高額の請求をすることが恐喝にあたる余地すらあると思います」
「警察は介入できない」
さらに、こんな事例まであった。ある女性が言う。
「いつも通り店舗の来店者用駐輪スペースに自転車を停めて買い物していたんです。でも、戻ってきたらすぐ隣にある『みんちゅう』の契約駐輪スペースに自転車が移動され、カギをかけられていました」
ここは同じ区画のなかに店舗の駐輪場とみんちゅうの契約駐輪場が隣り合っていた。
「頭のなかがハテナだらけでした。勝手に移動してお金を請求??って。文句を言おうとしても、自転車に付けられたタグには電話番号すら書いていなくて、ただQRコードから罰金を請求されるだけ。そんなふざけた話はありません。最寄りの警察署に相談すると、『警察は介入できないけれど、自転車自体は私有物なので好きにして大丈夫。個人的にはロックが外せそうなら外してそのまま帰っていいと思う』という返答でした」
かけられていたのは4桁のナンバー錠。女性は1時間ほどかけてカギを開けたという。
「カギが開いたのはほとんど偶然だと思います。周りには同じようにカギをかけられた人がいたけれど、開けることができていませんでした」
同様に、「公道に駐輪したはずが、隣接する『みんちゅう』のスペースに移動された」との証言もあった。

サイバーG社はこれらの証言について、「みんちゅう等の駐輪場だけでなく、物件全体の敷地の取締りを委託されているケースもある」「委託された敷地外や公道に停められている車両を取り締まることは一切ない」と説明する。また、先述のケースもCPGの取締員が自転車を移動した証拠はなく、実態は不明だ。だが、かつてCPGの取り締まり業務委託に応募した男性はこんな感想を口にする。
「取り締まりをするスタッフの報酬は、カギをかけられた人が罰金を払った時点で発生する仕組みでした。それも、自転車1台あたり600円程度でとても割がいいとは思えなかった。見回りをするだけでは1円にもならないから、多少スペースから外れていても片っ端からカギをかけるようなやつもいるだろうな、というのが率直な感想です」
CPGのホームページには、「不正駐輪・不正駐車根絶へ」「迷惑行為禁止」「不正者の情報をご提供ください」などの言葉が赤や黄色で大きく書かれ、なぜか警視庁、国土交通省、日本弁護士連合会、裁判所などのホームページへのリンクがデカデカと張られている。
駐輪料金を支払わない不正駐輪や駐輪場ではない場所に停められた放置自転車が、管理者や正規の利用者の利益を害していることは言うまでもない。それを排除したいと考える管理者の思いも理解はできる。それでも、この取り締まりの仕組みには、慎重な検証が求められる。
(AERA編集部・川口穣)