大学生になっても門限は「夕方」

 弟は市役所勤務で20代半ばに職場結婚し、母親は弟の結婚後に菜摘さんに婚活を促すようになる。そして菜摘さんが20代後になると、母親に結婚相談所に連れていかれた。

 仲人から希望条件を聞かれ、菜摘さんは「フィーリングが合う人」と答えたが、母親が「公務員で長男以外」と割って入った。この出来事に強い違和感を持った菜摘さんは、一度婚活を中断。30代になると、「このままでは人生を親に握られる」と感じ、こっそり1人暮らしの準備を進めた。物件契約後に母親に報告すると、母親から「1人暮らしをするような不良娘を誰も結婚相手に選ばない」と強く反対されたが、実家を離れた。

 その後、1人暮らしと転職を経て、菜摘さんはマッチングアプリで現在の夫と出会った。母親の反対を避けるため、先に彼の両親と会い、外堀を埋めた上で紹介する段取りを整えた。

「紹介したい相手がいることを電話で告げた際に『真っ先に公務員?』と聞かれ、会社員だと答えるとため息が聞こえました。『長男じゃないよね?』には『一人っ子の長男だよ』と答えたら、落胆が伝わりました。母親はこれまでも大げさな態度で罪悪感を与え、私の決断を止めてきました。しかし今回は、母親とは離れて暮らしてしばらく時間が経っていたため、母の気分に振り回されることはありませんでした。私は自分が無意識のうちに親の許可を必要としていると思い込んでいたのですが、そこから自由でいいのだとやっと気づいたんです」

 そもそも、婚活で「親ブロック」が存在するといっても、当の本人は気がつかないことも多い。その根底には親の愛情があるはずだと思ってしまうからだ。

 菜摘さんが最初に違和感を持ったのも大学生になってからだった。門限が日没だったことを友人から「小学生みたい」と指摘されたことがきっかけだった。彼氏とのドライブデート中に母親から何度も電話がかかってきたこともあり、あまりの着信の多さに電話に出ると「夕飯の時間だから早く帰ってこい!」と言われ、恋人が引いてしまった経験もある。こうした出来事が重なった結果、「自分の親は普通でないのでは」と感じるようになったという。

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