
一過性のブームに終わる可能性
米国で取材するスポーツ紙記者は「このバットには大きな懸念点がある」と指摘する。
「バットの先でとらえた打球が思った以上に飛ばないことを打者たちが口にしています。遠心力が使えないからでしょう。バッテリーが魚雷バットに対応して外角中心の配球をすることで本塁打が出なくなり、ヒットゾーンにも飛ばせないため打率が下がっている。メジャーでもこのバットを手放している選手が増えているので、一過性のブームに終わる可能性があります」
日本でも魚雷バットを試して使わないと判断した選手は多い。セ・リーグの選手は「練習で使いましたが、しっくりこないんですよね。バットのしなりを使えていないように感じたのでやめました」と明かす。
新庄監督は「打ち方としてはよくない」
そんな中、日本ハムの清宮がこのバットでアーチを放ったのは5月6日のオリックス戦だった。2回に先制の中越え二塁打を放つと、6回に右越え3号2ラン。16試合ぶりのアーチだったが、新庄剛志監督は手放しで喜ばなかった。スポーツ紙の報道によると新庄監督は、「清宮君は魚雷バットを使って打ったってことは差し込まれているんですよね。だから打ち方としてはよくないよね」とコメントしたという。
日本ハムの球団OBはこう指摘する。
「新庄監督の懸念は理解できます。魚雷バットで清宮が打った一発は、元のバットだったら差し込まれて外野フライだったかもしれない。魚雷バットで本塁打を打っても、外角を徹底的に突かれて打撃を崩してから、元のバットに戻しても対応するのが難しくなる。普通のバットと魚雷バットを打席によって使い分ければいいじゃないかという意見がありますが、ミートポイントや重心の位置が違うので打ち方が無意識に変わってしまう。魚雷バットは芯で捉える確率が高まるので魔法のバットのように感じますが、一方で打撃を崩しかねない。『禁断の果実』に近いと思います」
ただし、打撃不振に陥っている選手が現状を打破するための選択肢として、魚雷バットを手にする方法はあるかもしれない。今季19試合出場で打率.115、1本塁打と極度の打撃不振で5月1日にファームに降格した筒香嘉智(DeNA)に魚雷バットが届き、振り込んでいることが報じられた。
「筒香だけでなく、本来の輝きを失っている坂本勇人(巨人)、山田哲人(ヤクルト)は魚雷バットを試すことで復調のきっかけをつかめるかもしれません。試合で使用するかはともかく打撃練習の一環として導入は検討する価値があると思います」(スポーツ紙デスク)
魚雷バットを武器に、打撃を覚醒させる選手は出てくるだろうか。
(今川秀悟)
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