
妻を相手にその気になれない
「なんでか、付き合うことになったんですよね。世間的には不倫なんですけど、もう夫婦関係は冷めきっていたらしいんですよ。『とはいえ、この関係はどうなんだろう?』ってモヤモヤしているときに、彼の奥さんに2人目の子どもができたんです。『冷めきっているって言ってたのになんで?』って思うじゃないですか。彼は、『行為をした記憶がない。妻を相手にその気になれない。俺の子なのか怪しい』って言うんです。今考えるとめちゃくちゃ嘘っぽいんですけどね」
しかし、この時点で、彼の心は完全にみつさんのほうに向いていたらしい。奥さんに対して、「ほかに好きな人がいる」と宣言していたというのだ。だが、そんな勝手が許されるはずもない。
「奥さんから、『子どものためにも、もう夫とは会わないでくれ』ってメールが来たんです。私はどうしていいかわからなくて、困って彼に相談しました」
彼とずっと一緒にいたい
こうなると、疑心暗鬼になって破局しそうなものだが、みつさんはそうはならなかったらしい。
「私はむしろ、生まれてくる子どものほうが心配でした。私が原因でお子さんが流れてしまったらどうしようとか、ひとまず別れたことにしておいたほうがいいのかなとか。多分、私の中に完全に別れるっていう選択肢がなかったんでしょうね。別れたとしても、また元に戻るという予感もあったし、彼とずっと一緒にいたいという気持ちが強かったんだと思います」
離婚することなく、月日は流れていった。
いまは結婚をせがまれている
「不倫状態のまま付き合っていたので、会うのはほとんどホテルでしたね。まあ、どのみち離婚するだろうと思っていたので」
傍から聞くと、いわゆる常套句を用いる信用できない男性に思えるが、今は一緒に暮らし、みつさんは結婚をせがまれている。何があったのか。
「12年ほど経ってから離婚が成立したんです。子どもが大きくなったのと、前妻さんにいい人ができたんでしょうね。彼が私の家に転がり込んで来たんです。私は、ゆくゆくは彼が来るかもと思っていたから、2DKの部屋を借りていたんですね」