少子化が加速している(photo 写真映像部・東川哲也)
少子化が加速している(photo 写真映像部・東川哲也)

生きやすさの基盤の上に希望や夢がのってくる

 誤解を恐れずに言えば、少子化対策に「気持ち悪さ」を感じています。少子化問題が若い女性の生き方の問題にすり替えられている感じがするからです。結婚するのも子どもを持つのも、個人の選択の自由です。それを「少子化対策のために子どもを」と国があおるようなことをすべきではない。そんなことをするより、若い世代が自信をもってこの国で前を向いて生きていけるような社会をつくるほうが先。そういった生きやすさの基盤の上に人々の希望や夢や人生設計がのってくるはずです。

――今回、立憲民主党が出した法案では「子どもの姓を婚姻時に決める」としています。この点についてはどう思いますか。

 正直、将来持つかどうかもわからない子どもの姓を婚姻時に決めさせるというのには違和感を覚えますが、この点について妥協することで法案が成立するのであれば、容認してもよいのではないでしょうか。

 1996年に法制審議会がまとめた改正案要綱に沿った提案で国会がまとまり、法案が通るのであればそれでもいい。多少の妥協をしてでも早く通すべき事案ですから、できれるだけ早く、成立することを願っています。子どもの姓を決めるタイミングについては、選択的夫婦別姓の導入後に、子どもの姓の決め方についての議論を改めてすればいいのではないでしょうか。

社会はそう簡単には変わらない

――選択的夫婦別姓制度が導入されると現在の戸籍制度や家族制度が崩壊するという声があります。実際に導入されたら、社会はどう変わると思いますか。

 名字が違うだけで家族制度は崩壊しないと私は思います。そもそも「崩壊」を恐れている人たちが想定している「家族」というものが今この日本にあるだろうか、という疑問もあります。事実婚も多くなり戸籍の機能が低下し、家族が担う機能も変わってきています。

 世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数(2024年)によれば、日本は146カ国中118位。経済、政治、教育、健康の4分野で男女間の格差を評価するものですが、世界から取り残されている感が否めません。

 夫婦別姓の導入は、改革への「最初の一歩」です。他にも取り組まないといけない問題がたくさんあるというのに、この問題に30年もかけているということ自体がナンセンスです。

 それに、実際に選択的制度が実現しても、大きな混乱や変化は起きないと思います。一部の人が恐れているほどの影響もなく、また、逆に、選択的夫婦別姓実現だけでジェンダー平等が一気に進むというわけでもないと思います。大したことではないと言ったら語弊があるかもしれないけれど、こんなに時間を費やすものでしょうか。当事者にとっては「大したこと」ですが、新たに結婚する予定がない人にとっては、そこまで大きな問題ではないのではないか、と考えています。

 ここまで「選択的夫婦別姓」が実現してこなかった理由は、大きく分けて2つあると思います。1つは、意思決定の場の偏り、それによる優先順位の低さ。もう1つは、ほんの一部の宗教団体や特定イデオロギーを持つ団体の声がとても優先的に聞かれ、当事者の声が軽視されてきたこと。私はこの「選択的夫婦別姓」制度の導入を機に、日本の政策決定がよりフェアで合理的な判断が行えるようになることを願っています。

(構成/AERA編集部・大崎百紀)

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