能條桃子(のうじょう・ももこ)
1998年生まれ。豊島岡女子学園高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。慶應義塾大学院経済学研究科修士。20代の投票率が80%を超えるデンマークに2019年に留学したことをきっかけに、日本のU30世代の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」を設立し、代表理事を務める。団体名には「若い世代なくして日本はない」という意味を込めた。20年に一般社団法人化。Instagramなどを利用したSNSメディアの運営や選挙の投票率向上に取り組む。
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自民党が法案見送る方針固める

 選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり、自民党は12日、今国会での法案の提出は見送る方針を固めた。法案提出に踏み切っていた立憲民主党も他の野党と足並みをそろえることができなかった。これまでで一番実現に近いとされた今回も、ダメだったのかーー。失望が広がる中、U30世代の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さん(27)に話を聞いた。

【写真】【どうなる選択的夫婦別姓】将来結婚するかどうか、子どもを産むかどうかはわからない

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 以前、友人との会話で印鑑を作る際に「いずれ結婚して名字が変わるだろうから、下の名前だけで作るべきか?」という話題になったことがありました。それを当たり前としている友人もいましたが、私はその言葉に強い違和感を覚えました。「え、結婚するかどうかも分からないし、結婚するとしても、どうして女性が変えるのが当たり前なんだろうか」と。私は自分が印鑑を作る際には「能條桃子」で印鑑を作りました。名字と名前のセットで私だから。

 本格的に夫婦同姓を強制する現在の制度の問題を感じるようになったのは 20代後半になってからです。私は現在27歳。周囲では、結婚する友人が増えはじめ、中には結婚に伴って名字が変わることで自分らしさやアイデンティティーを失うことを自分もパートナーも経験したくないとの思いで結婚に踏み切れなかったり事実婚を選んだりするカップルが少なからずいます。いわゆる「別姓待ち」のカップルです。選択的夫婦別姓が導入されるまで結婚を控えている人たちが実際に存在しているから、とにかく早く法案を通して大きな一歩を踏み出してほしいと願っています。

立憲民主党の野田佳彦代表。4月末には改正案の提出に踏み切っていたが、、、、

婚姻時に夫の姓にする人が95.5%

 人口動態統計(2019年)によれば、国内では95.5%の人が婚姻時に夫の姓を選択しています。名字が変わるのが嫌というよりは、当然のように男性の姓にするというようになっている社会はおかしいと思っています。

 2024年の出生数は約72万人(人口動態統計の速報値)と過去最少です。少子化問題の解決の糸口としてこの選択的夫婦別姓の問題を捉えることに違和感はありますが、それでも、少子化問題が深刻だとして婚姻促進に躍起になる政策展開を見せながらも、選択的夫婦別姓の実現に向けた法改正の議論が一向に進まないのは、合理的な考えができないからだと思います。名字の問題で結婚できないという人たちの切実さを想像し、思いをくみ取ってほしいですが、国会にはこの問題の当事者にならずに済んできた人や男性が多いので、問題意識が低いのだと感じています。

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