東京・日枝神社を訪れ、記念写真を撮るインバウンド客ら(写真映像部・和仁貢介)

 昨年は東京都の明治神宮で、アメリカ国籍の男性が鳥居に文字を刻んだとして器物損壊の疑いで逮捕された。別の神社では、チリ出身の女性が鳥居で懸垂をする動画が拡散された。一昨年には、京都の八坂神社で外国人が鈴の緒を振り回す動画が投稿され、神社は夜間は鈴の緒を柱に固定せざるを得なくなった。

境内は神域、鳥居は境界線なのに

 東京・永田町の日枝(ひえ)神社の稲荷参道でも、昨年、外国人による衝撃的な行為があった。

 赤い鳥居は、インバウンド客の目には強烈な映えスポットに映るのだろうか。千本鳥居の下で、そろいの赤色のユニホームを着た外国人3人が挑戦的に踊る動画が、あるダンサーのインスタグラムに投稿されている。

 日枝神社広報課の権禰宜によると、防犯カメラは設置していたが、「見ていないタイミングで、無許可で撮影された」という。そして、こう訴える。

「鳥居は神域と俗世間の境界線です。境内は神域であり、お祈りする大切な場所なので、傷つけ、粗末に扱うことはやめていただきたいです」

 境内で「ダンス動画」が撮影されたケースはほかにもあると権禰宜は言う。

「1年ほど前、外国の方4人ほどが電子機器で音楽をかけて、踊っていたことがあります。SNSで見かける横揺れのダンスでした。注意してやめてもらいました」

海外のダンサーがインスタグラムに投稿した、鳥居でダンスする動画

マウンテンバイクで鳥居を疾走

 問題行為はダンス動画だけではない。過去には、千本鳥居をマウンテンバイクで爆走する動画が投稿されたこともある。マウンテンバイクが猛スピードで鳥居を次々とくぐっていく、一目で危ないとわかる動画だ。

「ほとんどの外国人観光客の方はマナーがよく、撮影も他の参拝客に配慮して行っていますが、一部に鳥居や灯籠に寄りかかるといった危険行為をする外国の方がいるのも事実です」(権禰宜)

 昨年から、神社は警備員を配置し、注意事項を英語表記したプラカードを持たせている。神社のHPでは長時間の撮影などの禁止を呼び掛け、職員が危険行為を見つけた場合、注意することもあるが、英語が得意ではない職員も多く、苦慮することもある。

「神社は日本の文化の象徴ですから、海外の方にも来てもらいたいです」(同)

訪日客は過去最速ペース

 2024年に日本を訪れた海外観光客は前年比1.5倍の3686万人で過去最多を記録した。今年は3月時点で1000万人を突破し、過去最速ペースだ。

 オーバーツーリズムに詳しい立教大学観光学部の西川亮准教授はこう話す。

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