神社はインバウンド客にとって魅力的なスポット。マナーを守り参拝する人が多いが、テーマパークとはき違える向きも(写真映像部・和仁貢介)
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 日本を訪れるインバウンド客は2025年、過去最速ペースで増加している。AERAデジタルが4月20日に配信した記事を再掲する(年齢・肩書は当時)。

【実際の写真】マウンテンバイクで鳥居爆走も。神社を観光するインバウンド客たち

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 海外観光客による神社での「不敬行為」が問題になっている。2024年に日本を訪れた海外観光客は前年比1.5倍の3686万人で過去最多を記録した。マナーを守る人がいる一方で、神社をテーマパークとはき違える観光客もいるようだ。苦慮する神社に話を聞いた。

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おみくじ箱を抱えて振り回す

 大阪市の難波八阪神社は千年の歴史を誇る。

 境内の獅子殿は、大口を開けた獅子がぎょろりと目をむく圧巻の迫力で、インバウンド客の人気も高い。

 1月のある日、6歳くらいの外国人の子どもが、社務所から持ち出したおみくじ入りの木筒を振って遊んでいた。母親は「獅子殿」の前でおみくじ筒を抱える子どもの写真を撮った。その後も注意する様子はなく、子どもはおみくじ筒を抱えてはしゃいでいた。

 居合わせた参拝客の女性は、ハラハラして様子を見守っていた。御朱印の受け付けをする職員からは、親子は見えていないようだ。

 ついに子どもは手を滑らせて、筒を落とした。おみくじ棒が境内の地面に散らばった。たまりかねた女性は、英語で注意した。

「神聖なもので、おもちゃではない」「すぐに戻してください」

 だが、母親は「写真を撮っているだけ」と悪びれない。子どもがおみくじ筒を社務所に返すこともなかった。女性が境内にいた少なくとも15分間、子どもはおみくじ筒を「私物化」していた――。

大迫力の獅子殿。難波八阪神社はインバウンド客にも人気だ(撮影/井上有紀子)

撮影に興じる観光客

 4月の平日午前11時、記者が難波八阪神社を訪れると、獅子殿の前には人だかりができていた。ほとんどがアジア系やヨーロッパ系の外国人だ。

 ベネズエラから来た女性(35)は「神社を訪れるときは、敬意を持つべきですし、静かに振る舞って、そこで示されているルールに従う必要があります」と話す。

 この日はマナー違反や問題行為は見られなかったが、撮影に興じる観光客で賑わうさまに、一瞬、テーマパークに来たような錯覚を覚えた。

 難波八阪神社の担当者は、他のおみくじ関連のトラブルは把握していると話す。

「(本殿の前では)お金を入れずにおみくじを引いていく外国の方がいると、連絡はいただいています」

SNSにアップされた動画の問題行為。日枝神社の千本鳥居らしき場所をマウンテインバイクが駆け抜けていく

インバウンド客の迷惑行為相次ぐ

 昨今、神社における外国人による迷惑行為が相次いで報じられている。3月23日、長崎県対馬市の和多都美(わたづみ)神社がSNSで「氏子、崇敬者以外の境内への立ち入りを禁じます」と発表し、波紋を呼んだ。

「極めて重大かつ許されない不敬行為が外国人によって行われました」として、

「インバウンドが日本人が大切にしてきた場所とモノと人を壊して行く様は、日本文化の崩壊にほかなりません」「テーマパークだとか、写真ばえするだけの場所としてしかみていない参拝しない方々は崇敬者ではない」と悲痛な叫びを上げた。

多くの参拝客でにぎわう難波八阪神社。海外からの観光客でごった返していた(撮影/井上有紀子)
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