沖縄問題を解決するのは日本政府

 アメリカの沖縄政策について、アメリカは辺野古移設を強く望んでいるが、地元に暮らす人々はノーと言っています。「卵を一つのかごに入れておけば(すべて割れる)リスクが増す」という私の考えは、中国の軍事力が上がることで米軍基地の沖縄への過度の集中がアメリカの軍事戦略上リスクになる、と受け止められていることは知っています。沖縄の人々が辺野古への移設を支持しないなら、我々は再考しなければならないとも私は考えています。沖縄で起きている問題は、日本が民主主義国家として解決すべき問題です。日本政府が辺野古への移設を進めるかどうかを決めなければなりません。それはアメリカにとっての用件ではありません。

 長期的に言えば、日本にある基地をもっと日本自身がコントロールして、本州や北海道などにもっと分散されるのを見たいと私は思っています。つまり沖縄の人に対する負担を減らすべきです。NIMBY(not in my backyard=わが家の裏庭には置かないで:社会的事業であっても自らの居住地域で行うのは反対)という発想は、すべての民主主義国が直面している問題ですが、まさにそれが日本における米軍基地問題です。

 繰り返しになりますが、最終的に決めるのは日本政府です。何が正解かを私が言うべき問題ではありません。私の基本的な考えは、先ほど触れた「アーミテージ・ナイ報告」で伝えてきましたが、詳細を決めることはできません。私が提案しているのは、米軍基地を日本中に置けということではなく、アメリカの部隊を注意深く日本政府の管理下に移していき、米軍はこれらの施設をローテーション(巡回配備)していくというものです。ただ、辺野古を含め沖縄問題を解決するのは、あくまでも日本なのです。

グローバルに展開される不確実性

 国連人口基金(UNFPA)は、インドの人口が2023年半ば時点で中国を抜いて世界一になるとの推計(14億2860万人)を発表しました。

 さらなる経済成長が期待される一方で、エネルギー、気候変動、人口増、食糧不足、パンデミックなどグローバルに展開される不確実性があり、世界は不安定要素にあふれています。ウクライナでの戦争が引き起こしているエネルギー問題はますます深刻になっています。

 ただ一つ言えるのは、エネルギーにせよ、気候変動にせよ、食糧にせよ、一国だけでは解決できないことです。パンデミックが浮き彫りにした問題の一つは、対策が国によってばらばらであったことです。

 民主主義国家、独裁主義国家に関係なく、世界が一つになって解決すべき問題ですが、各国間の協力を得ることはできませんでした。地球規模の協力が必要な問題であるにもかかわらず、それを得ることがほとんど不可能だったのです。

 これを見て、今後はグローバリゼーションと逆行する事態になると主張する人はいますが、ある程度それは仕方のないことです。サプライチェーンは部分的に寸断されたところもありますが、完全にグローバリゼーションを断ち切ることはできません。

 今、世界にあふれている不安定要素を少しでも減らすには、地球規模の協力がますます必要になります。各国間の相互依存を断ち切ることはできません。パンデミックで一時的にマヒしたように見えた世界経済も力強い回復をすでに見せています。

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