日本をめぐる二つの脅威
ウクライナ戦争はアメリカによるロシアとの代理戦争との見方があります。この戦争以後、日米同盟の構造に影響が出るとは思いませんが、今まで以上に強固なものになっています。日本はきわめて明確な理由で二つの安全保障の問題に直面しています。
まず、差し迫った脅威は北朝鮮です。日本のEEZ(排他的経済水域)内外に落下するような弾道ミサイルを発射しています。もう一つは中国からの長期的なチャレンジです。これらを突き詰めて考えると、日米同盟はさらに密な関係になるでしょう。
中国が台湾に侵攻するようなことがあれば、日本がその影響から逃れることはできません。だからそれが起きないようにすることがさらに重要になるのです。アメリカが日本の米軍基地から台湾を支援し、日本が中国に対して制裁を加えるということを中国に具体的に示さなければなりません。それだけで抑止力になると思います。実際に侵攻が起きたら米軍基地を米軍にフルに利用させることが大前提となります。
私とリチャード・アーミテージ氏(父ブッシュ政権一期目の元国務副長官)を中心とする日本専門家チームは、2000年以降、複数回にわたってリポートを出しました(「アーミテージ・ナイ報告」=有事法制、特定秘密保護法整備、集団的自衛権行使といった日本の安全保障に関する課題を挙げた。これによって第二次安倍政権下で特定秘密保護法が成立し、集団的自衛権行使容認へと憲法解釈の変更がなされた)。
アーミテージ氏と私は、日本を安定した民主主義国家とするために、1930年代の日本とは異なる、21 世紀の脅威を見据えてそれに備えた国にならなければならないと感じていました。その脅威は今言及した二つの脅威です。日本が自国の立場を強化すれば、周辺地域での戦争をよりうまく抑止することができるでしょう。
ですからアメリカと緊密に連携することは日本を守るだけでなく、地域を安定させます。まさにその意味で、自衛を拡大解釈して集団的自衛権を含めることは日本にとって、道理にかなっていたと言えます。