人生の後半に差しかかる時期は、心身の変化が表れやすい。画像はイメージ(GettyImages)
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 人生の後半に差しかかる40~60代の時期に8割の人が経験すると言われる「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」。不安や葛藤、焦りといった心の不調から一歩踏み出すことは容易ではない。

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 定年まであと10年、このまま同じことをやっていて人生後悔しないだろうか……。

 兵庫県に住む会社員の女性(54)は、ふとした瞬間、こんな思いが頭をよぎる。

 短大を卒業後、入社した都内の広告制作会社はバブル崩壊後の景気低迷によって3年で倒産した。以来、今の会社で一般事務として働き、昨年、勤続30年を迎えた。

 その時に気がついた。定年まで残り10年だ、と。その少し前には、同僚の40代半ばの男性がかねてからの目標であった飲食の道に進むため、退職し調理師の専門学校に通い始めた。

 夢があるし、憧れもある――。でも、こう思う。

「そこまでのやりたいことがあるかって言われると、ありません」

「明日死んだら」と自問自答

 ヨガや楽器は習っているが、あくまで趣味の範囲。世界一周の夢はあるが「会社を辞めてまで行く価値はない」と思ってしまう。

 どうしても考えるのは、経済的なことだ。女性は独身で子どももいない。自分の食い扶持は自分で稼がなければいけない。だったら、厚生年金をもらえるまで働くしかないと、自分に言い聞かせる。

 それでも、今は健康だがいつ死ぬかわからない。明日死んだらと、自問自答する。とはいえ、やりたいことが見つからない。

「頭の中で、ぐるぐるぐるぐる……。堂々巡りの葛藤が止まりません」

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