SASUKE©TBS

驚異的な再生数を記録した「VIVANT」 

 民放キー局でも配信との向き合い方への模索を続けている。

 地上波への誘導につなげようとする局もある中、昨年度、TVerで無料見逃し配信と過去作の配信をあわせて総再生回数が約9億8千万回となり、全局で1位を獲得したTBSは、独自の戦略を立てている。

 TBSテレビの田中徹コンテンツ戦略本部プラットフォームビジネス局長によると、配信は地上波の放送と対立するものではないという。「昔は地上波の1回の放送で、高視聴率を獲得するのがゴールだったが、今は配信などで何度もスパイク(数値などが上昇する現象)の波がくるようになった」と指摘する。放送の強みは同じものを一斉に送り出し、受け取れることだった。しかし現状は、様々なデバイスでの再生回数をあわせて「たくさんの人に見てもらうこと」が、大きな目標だという。

 転機となったのは2023年夏に放送された「VIVANT」だ。大作映画さながらのスケール感が話題になったこの作品は、TVerで全話平均364万回という驚異的な再生数を記録。改めて配信事業の勢いを強く意識するようになったという。

 現状、地上波では配信に“寄せた”番組づくりはしていないが、「夜遅めのドラマは、配信向けの刺激のある内容でもいいかなといったことはしている」。配信プラットフォーマーとの関係も強化し、「見てもらうために、どの配信にどのタイミングで出すかをコントロールするなど、考えながら進めている」と田中さん。

「SASUKE」のスケボー版を海外へ輸出

 そのTBSはグローバル展開も考えている。親会社のTBSホールディングスは22年に「THE SEVEN」を設立。Netflixとの結びつきを強めている。

 これまでも「おしん」や「キャプテン翼」といった番組が、日本を超えて人気になった例はあった。しかし、ネットの普及は世界に同時にコンテンツを発信することを可能にし、進化したAI翻訳は“言語の壁”を超えて、日本語で制作された番組を各国の言語に違和感なく翻訳できるようになりつつある。

 現在、TBSでは様々な仕掛けの凝らされた超高難度のアスレチックに挑戦する「SASUKE」のスケートボードバージョンの「KASSO」を開発。これまで、日本で6回放送したこのフォーマットを海外に出すことを計画しているという。

 コンテンツを起点に地方から全国、そして世界へ。田中さんも「メディアは戦うフィールドが多くなり、間違いなく面白くなってきた」と力を込めた。

[AERA最新号はこちら]