それに名古屋に基盤を置いていることも、「オモウマ」といった独創的な番組を生み出すうえで大きいと笠井さんは説明する。「東京に染まらない、画一化されない環境でものづくりをしているのでオリジナリティーが生まれやすい要因の一つだと思います」

写真:アフロ

 放送と通信の融合は進む。2015年9月にNetflixが日本進出。主にテレビ局が制作したコンテンツをネットで無料で流す「TVer(ティーバー)」も同年10月にサービスを開始した。19年になると、広告費でネットがテレビを上回るようになる。

 中京テレビの市健治メディア編成部長は配信が拡大する流れに肯定的だ。

「配信によって、コンテンツを届けられる選択肢も増えているし、地上波の強みも再確認できている。もともとコンテンツクリエーターだったテレビ局だが、その側面が強くなっている」

ローカル局の可能性を広げるTVer

 中京テレビの活発な動きの一方、人口減などの影響で、地方局を取り巻く経営環境の厳しさが指摘されるようになった。地方局の中には、自社で制作する番組はニュース番組などに限られ、1日の大半はキー局制作の番組を放送している局もあり、「再編」の影もちらついている。

 しかし、地方局の可能性を感じさせる事例は以前からあった。

 1996年10月から放送された北海道テレビ(札幌市)の番組「水曜どうでしょう」だ。番組販売で全国放送され、出演していた演劇ユニット「TEAM NACS」の大泉洋や安田顕らは全国的な人気を獲得。ドラマの常連出演者となった。

 配信メディアが、その可能性を広げている。

 月間の利用者数が約4千万に達したTVerは、キー局だけではなく、ローカル局が制作するコンテンツの集積地でもある。蜷川新治郎常務取締役COOは、「全国のテレビ局は『TVerを使って全国に発信していける』というプラットフォームとしての価値を持ててきている」と話す。

 実際、さんいん中央テレビ(松江市)の「かまいたちの掟」は、山内健司と濱家隆一の二人が島根・鳥取の山陰両県をめぐる様子が好評で、同局によるとTVerでの2024年の再生回数は約286万回だという。

 地方局の潜在力について蜷川さんは「ファクトチェックだったり、人権尊重だったりとかも含めて番組をつくっている。コンテンツとしての最大の価値はそこにある」と力説する。

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