日本がセックスレス大国といわれて久しい(写真はイメージ/gettyimages)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は「セックス」に関する男女の問題について。

【写真】「今さら夫とできない」産後のセックスレスが日本では「大問題」にならない理由

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 朝日新聞の連載「セックスレス夫婦 ずっとこのまま?」(4月5〜9日配信)が読まれているという。特に5日配信の「日本人夫婦の半数がセックスレス 『パパ、ママ』と呼ぶのをやめよう」は、一時、朝日新聞のアクセスランキング1位になっていた。政治、経済、社会などの一切合切を含めて一番読まれていた。「セックスレス夫婦 ずっとこのまま?」という問いかけのようなタイトルは、「半数がセックスレス」という現実があればこそ、多くの人にとって切実な心の声なのかもしれない。

 連載には3組の夫婦の話が登場する。

・風俗を利用するが自分とはセックスレスの夫との関係に苦しむ妻

子育てのなかですれ違い完全にセックスレスになってしまったことに困惑し続ける夫

・夫に拒絶されながらも話し合いを続けセックスレスを解消した妻

   どの話もヒリヒリと迫り、そして驚くほど似ている。いや、連載に登場した3組の話だけでなく、私がこれまで聞いてきたカップルの多くの話とも本当に似ている。日常は子育てや様々に追われ過ぎていく。子育てや家事に関わらない夫への苛立ちはセックスの回数と反比例していく。夫婦の会話も業務報告になっていく。とてもじゃないがセックスする雰囲気にならない。嵐のような日常が一段落ついたころ「そろそろ」と思っても、今度は相手とのタイミングが合わない。対話しようにも、そもそも性の話をする習慣がなく、かみ合わず、向き合えない。夫婦は夫婦と割り切り、他の人とのセックスを選ぶ人もいる。性産業を利用する人もいる。……かくして「結婚とは何か。夫婦とは何か」という凡庸で、だけれど誰も解決できない問題がループするのである。

 セックスレスに関してよく言われるのは「お互いに納得しているセックスレスなら問題ない」とか「すればいいというものではない」というものだが、性的なことを封じ込める日本の夫婦のあり方は、もしかしたら「本人たちが良ければいい」というだけの話ではないのかもしれない。

 連載中、産婦人科医師で一般社団法人・日本家族計画協会会長の北村邦夫氏がセックスレスの背景についてこう答えていた。

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