ちなみに日本企業の営業利益率の平均値は、製造業で約4.9%、小売業で約2.8%となっています(※)。業界平均よりも高い営業利益率をあげられていれば、優秀な経営ができているといえるでしょう。

 さて、この営業利益率に大きな影響を与えるのが、販管費です。例えば、製品を売るために多額の広告宣伝費を投入するなど、販管費が膨らむほど営業利益率は下がります。

 ただし広告宣伝費が上昇している場合は、それが新製品の認知度を高めるためなのか、販売に苦戦しているためなのか、理由を探ることが大切です。例年に比べ、大きな変動のある費用については、決算書の「注記事項」に理由が書かれている場合があります。

 また、大手製薬会社などは、新薬の開発を行うため、膨大な研究開発費を投入しています。今までにない画期的な薬を生み出し、製品の付加価値を高めることで、販管費が膨らんでも十分な利益を確保できるのです。

 このように営業利益率には、各会社が商品を売って利益を得るための「販売戦略」の結果が加味されます

 例えば、高付加価値の商品を販売する会社(業種)は、商品の開発やブランディングにお金がかかるため販管費が膨らみ、売上総利益率に比べて営業利益率が大きく下がることがあります。化粧品会社がいい例です。

 一方で、薄利多売型の会社(業種)は、販管費を抑制して利益を確保するため、売上総利益率と営業利益率の差は小さくなります。スーパーがいい例です。

 他社比較分析を行う際、我々プロは、業態ごとの差がより少なく、事業からの収益性がわかる営業利益率を重視します
(※ 2022年度の平均値。経済産業省『2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー』を参照)

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