
「精神的にタフに臨むためにも、ある程度楽しんで、ある程度集中するバランスが大切。今回のフリーは楽しむ気持ちで自分のスケートを見せることができました」
佐藤は覚醒のシーズン
一方、男子はエース鍵山優真(21)と佐藤駿(21)が、ともに死力を尽くした。鍵山にとって今季は忍耐のシーズン。前半は初の全日本王者を目指す重圧と闘い、世界選手権はエースとしての責任感を胸にメンタルの難しさを学んだ。国別対抗戦のフリーでは、前半にジャンプのミスがあっても、後半にエネルギッシュな滑りを見せた。
「最後はお客さんの顔を見ながら自分が伝えたいものをしっかりと意識しながら頑張りました」
スケーティング力は世界随一。来季の五輪に向け、戦略を見定めることが勝利のカギになるだろう。
また佐藤は覚醒のシーズン。優勝を意識しすぎた全日本選手権では、ミスが相次ぎ7位に沈んだ。自分の精神面を分析し、失敗を恐れない気持ちで臨んだ世界選手権では、実力を発揮して6位。国別対抗戦は38度超えの体調不良のなか、フリーでは4回転ルッツも降り、限界突破の演技を見せた。
「世界選手権で精神的に一皮むけたことで、この大会も楽しむことができました」
彼の鮮やかな4回転ルッツは、五輪に向けて大きな武器になる。
各選手が手に入れたのは、来季への自信と、団体戦金メダルまでの伸びしろ。チームジャパンは胸を張り、来季を見つめた。(ライター・野口美恵)
※AERA 2025年5月5日-5月12日合併号