2011年3月に起きた福島第一原発事故後の避難の混乱を思えば、避難計画「なし」での再稼働など許されるはずがない。それなのに国は「再稼働に関係なく核燃料がある限りは避難計画が必要」とする詭弁を使い、原発運転により利益を得る電力会社にではなく、直接の利益がない自治体に避難計画を策定させている(しかも義務付ける法的な根拠なく)。法的義務がないため、国は密室の中で自治体に事細かに指示をしてきた。それに対して真っ向から反論したのが泉田知事だった。
泉田知事に後押しされるように、密室の中でも新潟県の担当者たちは厳しく矛盾を追及していた。
原子力規制委員会(※当時は担当者が内閣府と併任)が2013~14年に関係道府県の担当者を集めて4回にわたり行った非公開会議「地域防災計画等の充実支援のためのワーキングチーム」(通称:合同ワーキングチーム)。2014年1月12日の第3回会合で、新潟県は「国の原子力防災計画等ワーキングへ提出した課題と国の対応」と題する1枚の文書を提出した。避難計画の基本課題ごとに、国が法整備や財源確保を手当てしているかを評価した一覧表だった。
全11項目の中に「〇」は一つもなく、特に法整備については「原子力災害と自然災害に対応する法体系の一本化」「国、地方自治体の指揮命令系統の明確化」など5項目に「×」がつけられている。要は法的根拠がほとんどない現状を可視化していた。
出席した新潟県の原子力安全対策課長(当時)は、
「こういった課題をクリアしないと具体的で実効性のある避難計画は作れないのではないかと思います」
と訴えたが、規制委(内閣府)の担当者からまともな答えは返ってこなかった。
指針見直しの訴えも規制委は無視
2015年8月24日、泉田知事は自らが主導した全国知事会の提言を携えて東京・六本木の規制委に乗り込み、田中俊一委員長(当時)に対して直接、原子力防災体制を改めるよう迫った。