
新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる議論が活発化してきた。東京電力ホールディングスは2月、テロ対策施設の完成延期とあわせて、夏までに7号機、そして6号機の再稼働を目指す方針を発表。再稼働の是非を問う県民投票の条例案は県議会で否決されたが、再稼働の焦点は、新潟県と原発30キロ圏内の9市町村が策定する事故に備えた避難計画の“実効性”だ。私は5年にわたり、国と自治体の担当者が集う非公開会議の議事録を中心に情報公開請求を続けてきた。膨大な公文書によって解明された東京電力福島第一原発事故後14年間の政策プロセスからは、泉田裕彦・元知事から花角英世・現知事までの代替わりに伴い、新潟県の方針が180度変わっていく姿が浮き彫りになった。
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正面から対決した泉田知事時代
「規制委(編集部注・原子力規制委員会)は原発設備の性能や断層の危険性だけを審査するだけで良いと考えているようです。米国は緊急時対策が整っていなければ稼働許可を出しません。日本も多重防護の考え方をとっていますが、新規制基準は避難計画を含めていないので不十分です。重大事故が起きた時に誰が現場で事故対応するのか、そんな議論すらない。『事故は起きない』という安全神話に回帰しているようにしか見えません」
これは2014年7月16日付の毎日新聞朝刊に掲載された泉田知事(当時)のインタビュー記事「そこが聞きたい=中越沖地震7年の提言」の一節だ。泉田知事は、原発再稼働の可否を決める安全審査の枠外に置いた原発避難計画の欠落を指摘していた。 泉田知事が言う通り、原発避難計画をめぐる最大の問題点は再稼働との法的関係が不明確なことにある。