
京都市で京友禅の誂えを専門とし、著名人らの顧客も多い「京ごふく二十八」を営む原巨樹(はら・なおき)さんによれば、愛子さまの本振袖に用いられたのは、紗綾形(さやがた)に菊と蘭をあしらった本紋(ほんもん)の地紋を織り込んだ生地だという。
「地紋の紗綾形は振袖にも多く用いられる生地で、愛子さまの本紋は大きめであることから、若々しい印象を与えています」
締めているのは華紋が美しい蜀江文(しょっこうもん)の西陣の帯。中国の蜀で織られ文様に由来し、八角と正方形が組み合わされた壮麗な錦の総称となっている。

そして、皇后雅子さまは、三つ紋の訪問着。袖と背中には、愛子さまと同じ内廷皇族が用いる「十六葉八重表菊」の菊紋を見ることができる。
淡い黄色を指す、淡黄蘗(うすきはだ)の地に、藤の花が描かれた訪問着。淡い紫やほんのり紅の混じる藤の花が優しげに描かれている。合わせたのは、華紋が織り込まれた西陣の帯。
この日、会場となった赤坂御苑では、藤棚に見事な藤の花が咲いており、まさに春の園遊会にふさわしい柄行であった。
愛子さまと母の雅子さまには、共通の美意識が感じられると原さんは話す。
ポイントは、おふたりの帯締めや帯揚げ、着物と帯の柄にごくわずかに入った、差し色だ。
「愛子さまは、水色の着物に対して、朱赤が見事なアクセントとなっています。そして、雅子さまは、ベースとなる黄色の訪問着に対して、わずかに青みを含んだ優しいピンクである、撫子色(なでしこいろ)が全体を引き締めていらっしゃいます」
おふたりともすっきりとした色使いの着物だが、差し色として朱赤と撫子色の濃淡を加えることで、ぐっと華やかに着こなされている。