AERAが実施した保護者向けのアンケートから

強い中学に「越境」入学

 保護者が熱心にサポートするあまり、踏み込み過ぎることもある。

 バスケットボールの部活に打ち込む娘を精いっぱい支えてきたミサキさん(仮名、60代、千葉県)は、当時をこう振り返る。

「娘は小学校からミニバスケットボール部に所属し、私も父兄の会に参加してきました。中学はバスケットボール部の強い学校に越境入学したんです」

 小学校の部活動は特に保護者が果たす役割が大きい。練習場所の体育館の予約、練習試合の会場準備・片づけ、児童を送迎する車(車出し)やお茶を用意する係の分担、会計管理など、仕事は山とあった。娘が6年生の時にはミサキさんは会長を務め、仕事を取り仕切った。

 学区内の中学校は「顧問があまり熱心ではない」と耳にすると、娘をバスケットボール部が強い中学校に越境入学させた。小学校のミニバス部の仲間9人も一緒だった。

 以前に増して、練習や試合に足を運ぶうちに、「娘をうまく起用していない」と、バスケ部の顧問に不満を抱くようになった。

えーっ、それって違うんじゃない?

 ミサキさんの娘は、小学生のときから「ガード」のポジションで頑張ってきた。ガードは、「コートの司令塔」ともいえる大切な役割で、ドリブルでボールをキープして、シュートを決める選手にパスを出す。だが、中学の部活では、ミサキさんの娘は別のポジションを担当するようになり、活躍の場面も減った。

「小学校のときとほぼ同じメンバーでプレーしたにもかかわらず、顧問は『ボールの運び方がうまいとは思えない子』をガードに使っているように見えました」(ミサキさん)

 試合に行くたび、「えーっ、それって違うんじゃない」と思った。

のめり込みすぎたかも

 ミサキさんは、ある試合の後、「うちの娘をガードで使うべき」と顧問に伝えることを決意する。

「当時、私の夫も中学校でバスケ部の顧問をしていたので、夫を通してもやんわりと言ってもらいました」(同)

 このときのことをミサキさんは「大人げなかった」と振り返る。

「のめり込みすぎたのかもしれません。本来は顧問に任せるべきなのに、自分の立場を勘違いしていた。今となっては恥ずかしい思い出です」(同)

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