『ブラック部活動』(東洋館出版社)の著書がある名古屋大学大学院の内田良教授は、こう語る。

「保護者がのめり込む気持ちはわかる。ですが、部活はあくまで子どものもの。親が一線を引くことも必要です」

部活動の手伝いは「苦行」

 負担に疲弊しきった保護者もいる。

 東海地方に暮らす主婦、ケイコさん(仮名)にとって、部活動の手伝いは、「休日は朝から晩まで1日中つぶれてしまう。ほかのお母さんたちにも溶け込めない。苦行でした」。

 ケイコさんの息子は小学5年生から地元の「スポーツ少年団」で野球に打ち込んできた。スポーツ少年団で保護者に割り振られるさまざまな「係」の仕事は「強制ではないが、やらなければならない雰囲気があった」(ケイコさん)。

 送迎の車を出す「配車係」、試合中に得点パネルを回転させて得点を表示する「得点係」、スコアブックを記入する「スコア係」。毎週末試合があり、係の仕事がまわってきた。夫は忙しく、部活の係はすべてケイコさんがこなした。配車係なら、朝6時半ごろ、子どもたちを乗せて試合が行われるグラウンドに向かう。午後も試合があれば、帰りは5時ごろになる。

強豪部できっとつらい目に合う

 人間関係も難しかった。母親たちは古参のレギュラー選手の親を中心にグループができていた。高学年で入団したケイコさんの息子は控え選手で、ベンチにいることが多かった。他の親の輪に溶け込めなかった。

 ケイコさんの息子は今春、中学校に入学した。野球部は全国大会に出場する強豪だ。これまでの「係」のほか、スポーツドリンクを用意する「お茶係」も加わる。コーチを買って出る父親もいるという。

「そんな野球部に入れば、自分がさらにつらい目にあうのは容易に想像がつきます」(ケイコさん)

 息子は野球をやりたがっているが、ケイコさんは、「野球部に入るのはやめてね」と、言い聞かせている。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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