ドジャースの山本由伸(日刊スポーツ)

投球フォームを見つけて2年連続2ケタ勝利

 転機は22年オフにスポーツトレーナー・鴻江寿治氏の主催する合同自主トレに参加したことだった。自身の体の動かし方に合った投球フォームを見つけ、質が良い球を投げる再現性が高まった。23年は初めて2ケタ勝利(10勝5敗)をマーク。昨年は開幕投手も務め、10勝8敗と2年連続の2ケタ勝利。初の投手タイトルとなる最多奪三振(187)も獲得し、エースと呼ばれるようにもなった。

 スポーツ紙記者は精神面での成長も飛躍の要因に挙げる。

「ムキになり力勝負で大量失点を喫するケースが目立ちましたが、冷静なマインドを保てるようになり、状態が悪くても最少失点できっちり試合を作るようになった。勝ちにこだわり、大人の投球ができるようになったと感じます」

 今年は技術面でさらに進化している。キャッチボールのような脱力した投球フォームから150キロを軽く超える直球を投げ込む。対戦した他球団の打者は「力感がないフォームから、速い球を投げられるとタイミングが取りづらい。制球が良くなりましたが、適度に荒れているので絞りにくい。スタメンで4打席対戦しても打てる球は1、2球あるかのレベルです。できれば対戦したくないですね」と漏らす。

メジャー志向を口にしていない今井だが…

 メジャー各球団のスカウトも今井に熱視線を送る。西海岸の球団編成担当は「登板試合は球場で視察していますし、映像でも投球をチェックしています。シュート気味に浮き上がる独特の球質の直球、キレ味鋭いスライダーは十分にメジャーで通用するでしょう。スタミナ十分でフィールディング能力も高い。先発として必要なすべての要素を高水準で持ち合わせている。山本に匹敵する逸材です」と絶賛する。

 メジャーリーガーの代理人も、「直球で空振りを取れること、絶対的な決め球となる変化球を持っていることがメジャーで活躍するために必要な条件です。山本、今永昇太(カブス)、千賀滉大(メッツ)が良い例ですね。今井はこの3人と遜色ない力を持っている投手だと思います。ポスティングシステムは球団が容認しなければ実現しないですが、認められた場合は複数球団の争奪戦になることは間違いないでしょう」と太鼓判を押す。

 西武は高橋光成、平良海馬が将来メジャーに挑戦する意向を表明しているが、今井は明言していない。報道によると、昨オフの契約更改で将来のメジャー挑戦について聞かれ、「今は日本のプロ野球でやっているので、日本のプロ野球で一番を目指すことだけを今は考えてやっています」と語ったという。

 今は西武で頂点に立つことしか頭にないだろう。昨年、球団ワーストの91敗を喫し、最下位に低迷した悔しさは消えていないはずだ。チームに白星をつけるため右腕を振り続け、チームが上昇気流に乗った時、メジャーのマウンドが視野に入ってくるのかもしれない。

(今川秀悟)

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