
新年度が始まって間もない4月9日。港区立青山中学校(東京都)の公式アカウントがSNSに投稿した一文が話題になった。
〈入学式を執り行いました。新入生20名、全員が揃う、厳かながらも素敵な式となりました。〉
青山中学は緑豊かな明治神宮外苑のすぐそばにあり、最寄り駅は東京メトロ銀座線・半蔵門線と都営大江戸線が乗り入れる青山一丁目駅。まさに都会のど真ん中にある。ビルが立ち並ぶオフィス街の中にある中学とはいえ、地方の過疎地域でもないのに「新入生20人」という数字はかなり衝撃的だ。
文部科学省によると、公立中学校の学級編成は現在、1学級40人が標準とされている。2026年度からは1学級当たりの上限人数が35人に順次引き下げられる予定だが、その新たな上限にすら満たない人数だ。
青山中学はここ4年間で48人、40人、35人、そして20人と年々入学者が減少している。管轄する港区教育委員会の担当者はこう話す。
「近年は特に、港区全体で区立小学校の卒業生が私立中学に流れていくという傾向が進んでいます。昨年度の港区立中学への入学率は34%程度でした」
東京都の「令和6年度 公立学校統計調査報告書」によると、24年の港区の中学受験率は52.5%と、23年よりも2.8%アップしており、23区の中でも特に教育熱が高い地域となっている。
また、総務省の「令和6年度市町村税課税状況等の調」の統計から年間1人当たりの平均所得を算出してみると、港区は約1169万円で、東京23区で最も高い。近年は受験の若年化が顕著になっており、経済的に余裕のある家庭では、小学受験も当たり前のように検討されている。
区内の公立小学校に小学2年の女子児童を通わせる母親はこう語る。
「保育園が一緒だったお友達の半数以上は小学校受験で私立に行きました。うちは小学校受験がうまくいかなかったので、何とか中学受験で取り返したいと考えています」
小学受験で一定数の家庭が私学に流れ、さらに残った児童の半分以上が中学受験でごっそり抜ける……そんな現象のあおりを受けて、青山中でも生徒数が減っているのだろうか。
「区全体としてはそうした傾向はありますが、青山中学の学区域の児童が区立中学を選択する割合は昨年度は38%と、区全体から見ると区立中学進学を志向する傾向が高い区域です」(教育委員会の担当者)