結婚相談所のルールとして、交際相手との初めてのお見合い日から3カ月以内に、結婚するかどうかを決めなければならない。

「決断のタイミングを迎え、なんとなく別れるのはもったいない、といった理由で成婚される方は少なくありません」(三島さん)

 3カ月という限られた期間で相手を理解した上で、「なんとなく」と思えた時が、結婚のタイミングなのかもしれない。結婚相談所とマッチングアプリでは、「なんとなく」に至るまでの費用と時間、「代替可能性」に隔たりがあるようだ。

選択肢が多すぎて選べない

 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」によると、結婚する意思のある未婚者が結婚相手に求める条件として、男女とも「人柄」を最も重視している。ついで「家事・育児の能力」に「自分の仕事への理解」。

 一方、東京都立大准教授で経営学者の高橋勅徳さんが指摘するのは、「マッチングアプリにおける価値判断基準は、収入・職業・見た目の三つ」という現実だ。一部の「高スペックな人々」だけに人気が集中した結果、むしろマッチングが成立しづらくなるという。

「自分の理想条件をもとに検索していけば、いずれはベストな相手が見つかる。場合によっては、望んでいた以上の存在に気づかされます。完璧な相手と結婚できる可能性を抱いてしまうのが、現代のアプリ婚活です」(高橋さん)

 もっと良い人が、きっとどこかにいるはず。婚活サービスは、時に「選り好み」を促進するものでもある。婚活経験者でもある高橋さんの著書『婚活との付き合いかた』(中央経済社)では、こうした現象を不問にしたまま、婚活の成否を個人の自己責任にゆだねる風潮を問題視する。選択肢が増えるほど、ひとつに絞れなくなるのは当たり前。その上で、「ツールとの“付き合いかた”を自分なりに定めることが重要」と高橋さんは説く。

「たとえば、結婚相談所の3カ月ルールのように、マッチングアプリの利用にも時間的制約を設けてみる。ユーザーだけでなく、婚活サービスの担い手側にも、こうした仕組みの提供が求められるのでは」

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