検索が可能な社会で

 冒頭の女性が、結婚生活1年で離婚を決断できたのも、マッチングアプリ特有の「検索可能かつカジュアルな出会い」が根底にあるからだろう。アプリを利用する若者にとって、婚姻関係の破綻は、単に元の独身状態に戻ることを意味するだけ(子どもがいれば話は別だが)。再びアプリに登録すれば、すぐに新しい相手を探すことができる。

 女性の「無理だったら別れればいっか」の一言からは、「次の相手を見つけるのは容易」という余裕と、「自分もサーチされてクリックされるコマの一つ」「代替可能な選択肢」というさびしさも感じられた。

 筆者も婚活でマッチングアプリを利用したことがある。28歳にして「バツ2」の男性と出会った。なんとなく選んだアプリで、何度もスワイプし、なんとなく「いいね」と思ったなかのひとりだ。おそらく相手も同じ状況だろう。離婚したばかりの妻と同居中でありつつ、新しい出会いを探しているとのことだった。

 結婚も、相手(わたし)のことも、なめている。彼にとっての結婚は、きっと孤独の穴埋め程度のものだったのだろう。マッチングアプリに幻想をいだいていたのは、28歳独身彼氏なしの筆者の方だと気づかされた。

 結婚は、「なんとなく」「思い切って」するものなのだろう。大切なのは結婚そのものではなく、その先にある、「代替可能ではない2人の人生」を、創っていくことだ。

(ライター 奈良春花)

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