
障がい者の性が“ないがしろ”にされているがゆえの重い問題を知ったのを契機に、障がい者向けの性サービスを提供する女性がいる。障がい者の性の問題についてまっすぐに語った。
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「お金を稼げるとは思わないで」
障がい者の性はタブー視され、なかったことにされがちだ。時として、障がいがある息子に、母親が「性」を提供してしまうこともあるという――。厳しい現実があることを知った小西理恵さんは、障がい者向けの性サービスの道に進もうと決意した。
住んでいる大阪に障がい者向けの性風俗店があると知り、短期間その店で働いた。
「うちのように障がい者を対象にした店の場合、一般の風俗店と違って、お金を稼げるとは思わないでほしい」
面接の際にはそう言われた。まだまだ知られていない領域でもあり、利用者の母数そのものが少ないためだという。約1年の在籍期間で、20人ほど接客した。いずれも身体障がい者で、リピート客も複数いたという。
毎回が勉強の連続
「一口に身体障がいといっても、一人一人全く違います。例えば下半身の感覚がない人、自力で起き上がったり歩行したりするのが難しい人……、それぞれに介助が必要な部分やサポートすべき点が異なります。接客には介護を学んだ経験が大きく生きましたが、毎回が勉強の連続でした」
その後、「より広く障がいと性をテーマにした活動がしたい」と、2020年に一般社団法人「輝き製作所」を立ち上げて独立。小西さんはその代表として、性教育の講座や講演活動を行っている。また、別事業として障がい者専門風俗店を運営しており、現在は、5人の女性が登録しているという。
介助の基礎を知っている
「登録している女性5人は、いずれも福祉系の仕事を本業にしている人たち。障がい者を専門にサービスを行うからには、介助の基礎的なことを知っている必要があります。転倒やけがにつながらないように安全を確保した上で、安心してサービスを受けてもらえる体制や環境が大事だと思っています」
性サービスの金額は、60分で1万8000円。内容は、手や口を使っての性サービスを提供する「ヘルス」と呼ばれるジャンルのものだ。裸の触れ合いの中で、キスや射精介助などをする。場所は、利用者の自宅かラブホテルなどに訪問することが多い。