アルコール離れは社会全体の大きな潮流だ。特に20代では週3日以上飲酒する人の割合が男女とも大きく下がっていて、「体質的には飲めるけれど、あえて飲まない」層も増えている。
最近では「ソバーキュリアス」という言葉が注目されている。ソバ―キュリアスとは、「Sober(しらふ)」と「Curious(好奇心が強い)」を組み合わせた造語。
お酒を飲める人が「あえてお酒を飲まない」もしくは「少量しか飲まない」という考え方やライフスタイルを指す。健康やメンタルを考えて、飲酒を控えるライフスタイルが若者を中心に浸透しはじめたと言えよう。ちなみに筆者(55歳)もソバ―キュリアスである。
実際に、アサヒグループが2021年に1万人を対象に行った調査では、「飲まない派」が全体の45.4%。そのうち「飲めるけれどほとんど飲まない=ソバーキュリアス」層は13.7%に上っている。
20代では「飲まない派」が過半数を超えた。コロナ禍の影響もあって、「わざわざお酒を飲む必要がない」「シラフのほうが気分がラク」という考え方が後押しされているのだ。
酔っぱらった上司を見たくない!
もう一つの理由に、「上司や先輩の酔っぱらった姿を見たくない」という強い拒否感もあるようだ。ある新入社員(Wさん)の体験談を紹介しよう。
Wさんが入社した最初の週は、理想の職場に思えた。広々としたオフィス、最新のITシステム、明るい先輩たち。とくに直属の上司である課長は入社式でのスピーチが印象的だった。
「自律的に考え、行動できる人材になってほしい。どんな些細な疑問でも私たちにぶつけてほしい。君たちの活躍を心から期待している」
上司の力強い言葉に「この人の下でなら成長できる!」と受け止めた。ところが入社1週間後の新人歓迎会で、その期待は無残にも打ち砕かれることになる。
「おい、今年の新人はどうなんだ? 去年入ったヤツは、最悪だったな」
1次会では機嫌よく振る舞っていたが、2次会に入ってから課長は別人になった。入社式の凛々(りり)しさはどこへやら、悪態をつき始めたのだ。