山梨学院の初優勝で幕を閉じた選抜高校野球。投手では山梨学院のエース・林謙吾はもちろん、光(山口)の升田早人、能代松陽(秋田)の森岡大智など公立高校からも、活躍の目覚ましい選手が登場。今夏の高校野球選手権大会でも注目されるはず。では、野手はどうか。
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打撃で目を引いたのは石野蓮授(報徳学園、兵庫)。初戦の健大高崎(群馬)戦では低めの球を軽く振り抜き、左翼席へ弾丸ライナーの本塁打を放った。「流しのブルペンキャッチャー」として全国各地のアマチュア選手の取材を続けるスポーツライターの安倍昌彦さんはこう話す。
「力任せではなく、タイミングを合わせて強く振れる本物のフルスイングです。右方向にも長打を打てますし、走攻守そろっている。同校では18年夏に出場した小園海斗(広島)以来の大物ではないでしょうか」
真鍋慧(広陵、広島)も長距離砲の逸材だ。
「練習でも飛距離は段違い」(本誌増刊の「甲子園」でおなじみのスポーツライター守田直樹さん)
「まだまだ粗削りだが、低めの球であれば高確率で長打を放てる。ツボにはまったときは手が付けられません」(安倍さん)
守備で光ったのは遊撃手の山口翔梧(龍谷大平安、京都)。スピード感のあるフィールディングに正確な送球で魅了した。
「大学生時代の源田壮亮(西武)レベルに見えました。アウトにできるかできないか、イチかバチかの打球にも巧みに対応できますし、度胸と技術は抜けていました」(同)
多士済々の“選抜組”だが、不出場組にも「将来的に村上宗隆(ヤクルト)になりうる」(同)スラッガーの佐々木麟太郎(花巻東、岩手)や、名門・横浜で1年時からエースナンバーを背負う杉山遥希、150キロを超える快速球で鳴らす東松快征(享栄、愛知)ら逸材がひしめき合う。
選抜を踏まえながら、今夏の選手権大会を安倍さんに展望してもらった。
「選抜は例年、投高打低になることが多いですが、今春4強に残った高校はいずれも打力が高かった。そんななかでも、公立校の好投手の活躍が目立つなど、各校の実力が均衡したおもしろい大会でした。強豪校であってもまったく気を抜けない、本命なき混沌の大会になることを期待しています」
夏、さらに一回り大きくなった球児たちの活躍を楽しみにしたい。(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2023年4月28日号より抜粋