
余命わずかな15歳の少女チューズデー(ローラ・ペティクルー)の前に“終わり”をもたらす鳥〈デス〉が現れる。チューズデーはジョークで〈デス〉を笑わせ、母が帰宅するまで死期を延ばすことに成功する。だが、母がある暴挙に出て──? 死生観を奇想天外かつ新たな視点で描く物語「終わりの鳥」。脚本も務めたダイナ・O・プスィッチ監督に本作の見どころを聞いた。





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私は10代のころ友人を変性疾患で亡くしました。彼女はシングルマザーに育てられ、チューズデーのような強さを持っていました。死を受容したこの経験から本作のインスピレーションが生まれました。旧ユーゴスラビアという不安定な歴史を持つ地域で育ったクロアチア人であることもどこか影響しているかもしれません。
〈デス〉は最初、光の一点のようなイメージでした。でも光は冗談も言えず、ダンスもできません。恐ろしくかつフレンドリーで、永遠に生きるイメージをもたらしてくれる説得力のある生き物としてコンゴウインコを選びました。インコは言葉を話しますしね。〈デス〉のビジュアルは声を演じるアリンゼ・ケニがカメラの前に立って演技をし、その上にVFXを重ねる手法で創造しました。彼の演技の重みや存在感がなければ本作はまったく機能しなかったでしょう。声も一切フィルターをかけることなく、そのまま使っています。

私は人々が「生」に価値や喜びを見いだす理由は「終わりがあるから」だと考えます。「死」を落ち込んだり恐怖や悲しみを感じたりする形でなく常に頭の中に置いておくことは健全なことで、それが「生」を受け入れることにもつながる。死を受け入れる視点や賢明さを持つことで、死への恐怖も消えていくのではと思っています。
チューズデーと母親には「死」という痛みが降りかかります。個人の悲劇が世界を終わらせかねない状況につながる。しかし最終的には世界を変えられるようなパワーになっていきます。本作から「あなたの痛みや悲しみを誰かが見てくれている。孤独ではない」と感じてほしいと願っています。そして〈デス〉の言うとおり「生きている人間の生き方が、亡くなった人をずっと生かしていく」のです。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2025年4月14日号