
男女別学が減少し共学化が進む中で、別学の存在意義とは。社会や時代の変化に沿った、女性に必要とされる能力や考え方の教育に取り組む昭和女子大学の総長、坂東眞理子さんに話を聞いた。AERA 2025年4月14日号より。
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──別学で学ぶ場合に必要なジェンダー教育とは、どんなものでしょうか。
まずはジェンダー平等において、日本は世界水準から大きく後れをとっていることを知ることです。日本の「当たり前の女性の生き方」は特殊なのです。
女性は30代以降になって初めて、社会における男女格差を強く感じる実例が多数あります。子育てや介護などで職場を離れざるを得ず、非正規雇用になる人も多く、賃金格差も生じやすくなる年代だからでしょう。
「あるべき男性像」脱却
子育ての場面においても、父親の参加はまだ少なく女性ばかりがワンオペしている実態が背景にあります。
別学で学ぶ生徒たちのなかには、社会に出てからはじめて、多くの異性と一緒に働くことになる人もいます。生徒が偏った異性観を持たないよう、学校がどのような教育方針でジェンダーの問題と向き合うかは大切です。
女子校は女性の教師が多いので、教師が自身の経験に基づき、女性ならではの視点で教育できるのもメリットです。
昭和女子大学では、男子校に出向いて生徒にアンコンシャス・バイアスの授業をしています。21年から3年間、駒場東邦中学校(東京都世田谷区)でジェンダーについて学ぶ共同授業をしました。年に1度大学生らが主導して、男女に求められてきた役割の違いについて学びました。
昨年9月には立教新座高校(埼玉県新座市)の2年生を対象に、ジェンダーにまつわる偏見について授業し、育児を扱ったコマーシャルなどを題材に女子学生と男子高校生が議論しました。
このようにお互いがお互いのことを学んでいくことが大事です。「女性が低く見られがち」という事実や歴史を知ることも大切ですが、男性も「男はこうあるべきだ」という「あるべき男性像」にとらわれているかもしれないことを自覚するべきでしょう。
──昭和女子大学長に就かれて以来約20年にわたって、女子学生に接するなかで、学生の考え方や生き方に変化は見られますか。
女性は確実に変わってきていると思います。結婚や出産を機に退職せず、生涯働き続ける女性が多数派になりました。その影響もあって、自分の意見をしっかり言える学生が増えています。