
2018年9月に起きた、大阪地検元検事正の北川健太郎被告による「レイプ事件」。昨年12月、被告は一転して「無罪」を主張。被害に遭った女性検事が刑事告発していた副検事は3月に「不起訴」となった。この事件をめぐり、厳正な捜査と真相解明を求める署名が6万筆を超えた。女性検事が性被害の苦しみを打ち明けた。AERA 2025年4月14日号より。
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──今回、意を決して会見を開き、被害を公にしたのはどうしてだったのでしょうか。
二つあります。一つは、副検事が北川被告に加担し捜査妨害行為をしていたのに検察組織は放置し、被害者の私にも言わず、副検事と同じフロアに私を復職させ、危険に晒しました。さらに副検事らによる二次被害を受けているのに、検察組織はまともに対応をせず、むしろ、被害感情を逆撫でするような対応で苦しめられました。そこで、検察の外に助けを求め、自ら尊厳や名誉を回復する必要があり、被害を公にしました。つまり、公益通報のつもりでした。
──あと一つは何でしょう。
被害を公の場で話すことで、性被害の深刻な苦しみを知ってもらいたかった。検察官の私ですら、被害申告までに5年余りを要しました。一般の方が被害申告できないのは当然です。性被害は心も体も破壊され、尊厳を踏みにじられ、過去も汚され、未来も奪われるからです。声を上げられず苦しんでいる方々がたくさんいる。だから、「あなたは一人じゃない。生きていてくれてありがとう」というメッセージを届けたかったのです。
仕事は生きがいだったが、未来が見えず、絶望的
──ご自身、今は「私は一人ではない」という気持ちになれていますか。
夫や家族、弁護士の先生、友人らが私を必死に支えてくれています。また、面識のない多くの方々が支援してくださって、法務省や最高検に事件の真相解明などを求める署名が6万筆を超えました。「支援する会」も立ち上げてくださって、340名が登録し、温かいメッセージを送ってくださいます。だから、「一人ではない」はずなのですが、本来、味方であるはずの検察組織から蔑ろにされ傷付けられ続けているので、強い恐怖と孤立感があります。未来が全く見えず、絶望的な気持ちになり、消えてしまいたくなることもあります。人と接するのも嫌で、家で布団にくるまっている状態になることもあります。