画像はイメージ(撮影/写真映像部・東川哲也)

「憂さ晴らし」に学校へ

 わが子への愛情が行き過ぎるがゆえに、過敏になる親が多いのも中学受験家庭の特徴の一つかもしれない。その結果、家庭内で問題が起こることもある。アンケートで「過去に中学受験に臨む家庭で『教育虐待』のようなケースを見聞きしたことはありますか」と質問したところ、26.9%が「はい」と答えた。

「成績が伸びない子に対しての暴言、遊びの禁止など。ただ、本人が訴えないかぎり、学校は家庭の問題に対処できない」(福岡県、60代以上、女性)
「児童の学力が志望校より低いため、家庭で暴力があり、保護者と面談したが理解してもらえなかった」(高知県、60代以上、男性)

 前出のミサキさんも教育虐待と思われるケースを目にした。教育熱心な父親からたびたび殴られて、あざだらけで登校する男児がいた。

「当時の私は、それにきちんと対処できなかった。今も彼が保護されたときのことを思うと、本当につらいです」(同)

 家庭で過度なプレッシャーをかけられたがゆえに、学校で問題行動を起こす子どももいる。受験生の中には、学校の壁に落書きをしたり、トイレットペーパーを便器に投げ込むなどをした子がいたと話す教員もいる。ミサキさんは担任のときにこんな経験をした。

「彼らは小学校の学習過程を塾で学び終えているから、授業を聞きにくるのではなく、気分転換のために学校に来るんです。そのため授業中はイスに座らずに、勝手気ままに立ち歩いたりします。それを注意すると『うざったい』などと反抗する子もいて、まるで『憂さ晴らし』に学校に来ているのではと感じることもあります」

 前出のユウさんも「中学受験に合っていない子どもたちの疲弊がすさまじい」と話す。

「塾では成績順で机の位置が変わり、成績が悪ければ、自分が落ちていくさまが可視化される。そのストレスを学校で発散させないと、彼らもやっていけないのでしょう。だから、授業妨害が起こる」(ユウさん)

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