画像はイメージ(撮影/写真映像部・東川哲也)

新型コロナで増えた長期欠席

 東京都心には、さらに多くの児童が休む小学校がある。

「冬休み明けに、ある小学校で行われた研究発表会に参加すると、中学受験で来なくなった6年生の机やイスが教室の隅に寄せられて、子どもたちが授業を受けていました。その時期はクラスの人数が半分になるような状況が当たり前なので、教員たちは誰も気にしていませんでした」

 そう語るトモコさん(仮名、50代)は東京23区内でも私立中学への進学率の高い区の公立小学校に勤めてきた。

 文京区のある小学校では、30年前も児童の多くが中学を受験していたが、受験前に休むような児童はあまりいなかったという。だが、10年ほど前から“ポツポツ”と学校を休む児童が増え始めてきたと話す。

「それでも、受験の2週間前くらいに『中学を受験するのでしばらく休ませます』と連絡をしてくるお母さんがたまにいたくらいでした。学校としては『自己都合による欠席』という扱いでした。それが新型コロナを境に一気に変わりました」(同)

 文部科学省は2020年6月、新型コロナウイルスへの感染不安で登校しない場合は「欠席」ではなく「出席停止・忌引等」で扱えると、全国の教育委員会に通知した。

「保護者から学校に『コロナが怖いので行かせません』という電話が1本あれば、欠席扱いにはなりません。そのため、21年1月からは中学受験をする子どもたちはぱったりと来なくなりました」(同)

 最近は12月から学校を休む受験生も珍しくないという。

「今は、試験日以外は『欠席』扱いになりますが、欠席を気にする保護者はもうほとんどいません」(同)

休んでも「権利」を主張

 千葉県の小学校で管理職を務めるユウさん(仮名、50代)は、中学受験のために学校を休む児童の保護者への対応に苦慮してきた。

「自分の子どもへの愛情過多から、休んでいる間も『権利』を強く主張する保護者が少なくないのです」(ユウさん)

 たとえば、班ごとにクラス活動を行う際、中学受験で登校しない児童も必ずメンバーに加えなければならない。学校に来ないからとメンバーに入れないと保護者からクレームがくるのだという。

「私は、教室の掲示板に貼られた班のメンバーの名前を数えて、クラス全員が入っているか、よくチェックしていました。経験の浅い若い教員には特に注意をうながしていました」(同)

 学校給食でも同様だ。

「デザートの味が選択できる日は、担任は中学受験で休んでいる児童全員に電話して、『チョコレート味とカスタード味、どちらがいいですか』と聞かなくてはならない。もちろん、その子たちは学校に来ないから、給食は食べない。でも、そういう作業が欠かせないんです」(同)

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