大阪地検・高検が入る庁舎。検察の理念は社会正義の実現である。「法の番人」として、組織内で起きた性犯罪に真摯に向き合うべきだ
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 大阪地検元トップによる「レイプ事件」。被告は一転し「無罪」を主張し、被害に遭った女性検事が刑事告発していた副検事は3月に「不起訴」となった。元検事正による性暴力は「組織の問題」「正義の味方」である検察で、何が起きているのか。女性検事が、悲痛な胸の内を明かした。AERA 2025年4月14日号より。

【画像】子どもにかかわる職業に就き性加害を繰り返しているケースがこちら

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──今も事件の記憶が蘇ることがあるのでしょうか。

 無意識に、レイプされている最中の場面や恐怖、惨めな感情がフラッシュバックします。

 検察組織内の多重加害によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状悪化で、怒りや絶望、孤立感を強めていて、子どもの前で泣いてしまうこともあります。子どもには、「ママは検察で性被害に遭い仕事を休んでいる」と伝えているので、子どもなりに理解してくれていて、私が泣いていると、何も言わずに自分の部屋に行きます。

 味方であるはずの検察組織にボロボロにされ、感情を抑えられず、夫や子どもに当たってしまうこともあり、家族をも苦しめてしまっていることがつらいです。家族も今回の一連の事件の被害者です。

──事件は2018年9月に起きました。大阪地検の検事正だった北川健太郎被告(65)が、自身の官舎で、酒に酔った部下のあなた(女性検事)に性的暴行を加えたとして昨年7月に起訴されました。同年10月の初公判で、北川被告は起訴内容を認めましたが12月、一転して無罪を主張しました。4カ月余りたち、いまの気持ちを聞かせてください。

 被告は、法の番人であり公益の代表者である検察の、しかも800人の職員を指揮監督する大阪地検のトップの検事正でした。綱紀を保持し、国民の信頼を確保し、職員の鑑となるべきそのトップが、個人的関係のない部下の私が宴席で泥酔し一人で帰宅しようとしているのに、強引にタクシーで自身の官舎に連れ去り、泥酔して睡眠中の私をレイプしました。私が予想もしなかった事態に直面して恐怖、驚愕し、凍り付き「夫が心配しているので帰りたい」と言っても、「これでお前も俺の女だ」と言い捨て、3時間も避妊すらせず私をレイプし続けました。それが犯罪に当たることは、誰よりも彼自身わかっているはずです。

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