類稀なパスセンスは、NBAでも光るものがあるし、Gリーグにおいては派手なパスだけではなく、司令塔としてのタレント性も発揮。チームの中心としてプレーしていたことからも、オフェンス面はNBAレベルと言えそうだ。
しかし、ディフェンス面ではさらなる成長が求められる。身長172cmというサイズを補うクイックネスはあるものの、パワーで押されてしまうことがあり、NBAプレーヤーと対峙するにはこれを克服する必要がある。
またシュートの精度を上げることも課題だ。ハッスルでの3Pシュート成功率は申し分なかったが、グリズリーズでのそれは25.0%で、フィールドゴール成功率も36.4%と低調だった。NBAチームと本契約を結ぶには、ハッスルでプレーしていた時のようなシュート成功率を、NBAの試合でも残せることを証明する必要があるだろう。
一方の富永は、インディアナ・ペイサーズ下部組織のGリーグ、インディアナ・マッドアンツに所属しており、こちらもレギュラーシーズンが終了。最終戦は20分56秒コートに立ち、13得点、3リバウンドという数字を挙げた。ハッスルと異なり、マッドアンツはプレーオフ進出が決定。今後の富永はプレーオフで爪痕を残せるか注目されている。
今季の富永は、ペイサーズとエキシビット10契約を結び、トレーニングキャンプに参加。しかしその後にウェーブされ、マッドアンツに所属することが決まった。
ネブラスカ大時代にも注目され、エースとなる原動力となったシュート力が発揮されるようにも思われたが、同じくGリーグでプレーする河村とは異なり、なかなかプレー機会に恵まれず、レギュラーシーズンの出場は14試合で平均プレー時間は8.7分。得点は5.4というアベレージで、フィールドゴール成功率は49.0%、3Pシュート成功率は46.9%と高確率だったが、不完全燃焼と言えるだろう。
富永も1シーズンをGリーグで過ごすことで、河村と同様にディフェンスに課題があることが分かった。シュート力は申し分ないが、サイズ不足からくるフィジカル面は今後も大きな改善が求められる。“和製カリー”といわれるなど卓越したシュートセンスでプロの世界に乗り込んだが、守備力は米国のプロレベルには到達していないということだろう。
富永の身長は188cmだが、これは米国だとポイントガードの高さだ。このサイズでシューティングガードをプレーするには、フィジカルを強くしディフェンスのスキルをさらに磨くしかない、ということだろう。
河村、富永ともにディフェンス、フィジカルという共通の課題を抱えながらも、NBAでプレーできるポテンシャルは十分にあるはずだ。まだシーズンが完全に終わっておらず、気が早い話ではあるが、来年の今頃は、二人がNBAのコートに立っていることを願いたい。
(文・田村一人)