
都心部を中心とした中学受験の過熱ぶりにより、教育虐待や「格差の助長」など、メディアではネガティブな側面がクローズアップされるようになってきた。だが、一時は親子が険悪になったり、たとえ第1志望に合格できなかったりしても、振り返れば「やってよかった」と話す家庭は少なくない。その“満足感”はどこで得られるのか。実例から探った。
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※【前編】<「中学受験」第1志望当日に“もうムリ!”と泣き叫んだ娘…それでも「やってよかった」と話せる家庭は何に“満足”しているのか>から続く
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深刻な少子化が社会問題となっている昨今でも、特に都心部における中学受験ブームはおさまる気配がない。
さらに今年は、いわゆる「高校授業料無償化」によって、今まで経済的な事情で中学受験を見送っていた家庭が新たに参入する可能性もある。国会では、26年4月から私立高校を対象に加算されている就学支援金の所得制限を撤廃し、上限額を私立の全国平均の授業料である45万7000円に引き上げることが検討されている。無事に無償化されれば、私立の中高一貫校に入学しても、高校での保護者負担は“半分”となる。そのため中学から私立入学を検討する家庭が増えるのではないかと見る向きもある。森上氏はこう語る。
「国に先行する形で、東京都は24年度から所得制限を撤廃して私立高校の授業料を48万4000円まで助成する制度が始まっています。先行事例として東京の傾向をみると、25年の私立中学の受験者数は、中位層に限ると伸びています。偏差値55~59層は共学校、50~54の層では男子校、45~49の層では女子校が、それぞれ24~29%ほど受験者数を増やしています。高校授業料無償化が始まるタイミングで中学受験への参加を決め、1年間勉強をした受験生たちがこの層に集まった可能性があります」
中学受験は一部の富裕層だけでなく、多くの家庭が選択できるイベントになりつつある。
それゆえ競争は激しさを増し、中学受験で第1志望に合格できるのは「3人に1人」と言われるようになった。では第1志望に合格できなかった「3人のうち2人」は不幸なのかといえば、決してそんなことはない。第2、第3志望の学校に通うことになっても、進んだ先で満足している家庭は少なくない。