オーストラリア・ニュージーランド訪問の旅。シドニーのタロンガ動物園で、しゃがみ込んでワラビーの説明を受ける皇太子さま(当時)と雅子さま=2002年12月、シドニー、JMPA

 秋篠宮さまは今年2月に、タイの国立大学から畜産学の名誉博士号を授与された式典で、宮妃の紀子さまも昨年の国際小児がん学会の式典において、それぞれ英語でスピーチをしている。

 上皇さまも国際親善の場はもちろん、ロンドン・リンネ協会主催の記念行事において英語での講演や多数の論文を執筆している。上皇后美智子さまの英語のスピーチとしては、2002年にスイスで、自らの疎開体験とともに本や子どもたちへの思いを英語で語った国際児童図書評議会(IBBY)の大会が印象深い。

 平成の時代に侍従として仕え、駐チュニジア、駐ラトビア特命全権大使などを歴任した多賀敏行さんは、他の皇族方の英語や仏語でのスピーチの映像も残っているだけに、雅子さまについてはまだそうした機会がないのが残念、と話す。

ご結婚の翌94年、タイから中東へ向かう政府専用機内で、資料を見る皇太子さま(当時)と生き生きとされた表情の雅子さま=1994年、バンコクーリヤド間、JMPA

 多賀さんは、皇后さまが外務省時代に通訳として、「It gives me great pleasure to share this evening with you in …(今夕を皆様とご一緒に過ごすことは私に大きな喜びを与えます)」と流暢に話されている映像を見たことがあるという。

 一方で、ご結婚後は、皇太子妃時代のオーストラリア訪問でコアラを抱えて「Oh!Lovely」と口にされた場面などはあるものの、

「一単語から成る短い音声がほとんどで、主語、動詞、目的語から成るきちんとしたセンテンスを発音されている映像はほぼ見つけられません。長さのあるセンテンスで話されている音声を聞くと雅子さまの英語はさすがといいますか、知的で発音が滑らかなことが分かります」

 それだけに、英会話による接遇場面がほとんど公表されないのが、もったいないと感じる、と多賀さんは話す。

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