
「彼らにはパッションがありますね。車に限らず他のプロダクトも同じような状況だと思います。日本製品は品質もいいし、ブランドがある。確かにその通りですが、それにあぐらをかいてしまったのだと思います」
夢、情熱、挑戦を
ではどうすれば日本車はかつてのように輝けるのか。
「今も素晴らしい車は多くあります。でも昔のようなドリームやパッション、そしてチャレンジを感じる車はあまりないかもしれません。60年代、70年代の車にはそのすべてがありましたね。映画にも印象的な車が登場しました。『007は二度死ぬ』に登場したトヨタ2000GTなどはその象徴でしょうね」
ただ、ドリームやパッション、そしてチャレンジをつくり手だけに求めるものではないと強調する。車を使う側も同じ思いを持ってほしいと力強く続けた。
「車のデザインは社会を映す鏡なのです。その時代の流行、経済、技術、それにかける投資などあらゆる要素が詰め込まれたものなのです」
そう話す中村さんは現在はマイクロモビリティを沖縄で展開するプロジェクトを進めている。顔が見える小さなコミュニティーで車への思いを実現していくことが一つの使命だとしている。
「人間は移動することに根源的な喜びを感じる生き物だと思います。いかに楽しく移動するかの欲望や夢はなくならないはずです。日本車と日本社会にドリームやパッション、そしてチャレンジがもっと広がっていけばと願い続けています」

(ライター・鮎川哲也)
※AERA 2025年4月7日号より抜粋